平成15年1月20日月曜 東京都 虎ノ門パストラル 地域振興部門 ジャージー牛乳を活かした小国郷酪農の第6次産業化への取り組み 熊本県阿蘇郡小国町阿蘇農業協同組合小国郷営農センター |
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阿蘇農業協同組合は、阿蘇地域全域(12か町村)を活動の範囲とし、販売高13,200百万円の熊本県有数の総合農協である。 ジャージー酪農は小国郷営農センター(旧阿蘇小国農協)が昭和30年代にオーストラリア等から導入し、産地育成してきた。 小国郷は小国町と南小国町の2町からなり、九州のほぼ中央の標高500mから900mの地帯に位置する中山間地である。 昭和30年代から現在に至る約半世紀の間、ジャージー種100%の産地を維持拡大してきた。草地開発事業に積極的に取り組み、経産牛1頭あたりの自給飼料供給面積56aを確保し、土地利用型酪農を展開している。 後継者問題が農業全体の生産現場で取りざたされる昨今にあり、ジャージー生産部会(小国郷酪農振興会)25戸の内、18名が既に後継者として就農しており、生産者育成も見据えた農協の取り組みが、生産基盤にも反映されている。 ・6次産業化の取り組み ジャージー牛乳という特殊性から、生産された牛乳は全量を農協が独自に販売することを求められており、まさに「販売なくして生産なし」と言う状況に直結している。 このため、農協では独自の販売網を構築するとともに行政と一緒になり学校給食や地域への観光客に向けた販売を促進した。 主な供給先を人口の多い福岡都市圏にねらいを定め、生産量の約70%を出荷している。また、地域内でのジャージー牛乳販売シェアは90%にものぼり地域密着の産物に成長している。 生乳の需給バランスをとることを目的に昭和60年代に乳製品加工に取り組み、併せて加工施設や物産館を建設し生産と販売の調和を図った。平成13年にはドリンクタイプのヨーグルトを商品開発し、ジャージー牛乳の新たな需要を喚起している。 牧場体験や販売促進会などを通じて積極的な消費者交流を行い、消費拡大とともに酪農や農業の理解活動も展開している。 このように希少乳用種であるジャージー種を活用し、酪農とその周辺産業を6次産業化の視点で地域に定着させた農協の活動は今後も大きな期待が寄せられている。 ・地域経済への波及効果 農協による、地元畜産資源を活用した加工品開発は、昭和60年に小国町がスタートした、地域の特性を生かした町づくり運動である「悠木の里づくり」の大きな原動力となった。 また、酪農の産地化に継続して力を注いで来たことは新たな産業興しを定着させるという成果をあげるとともに、現在の取り組みは、牛乳や乳製品出荷に伴う雇用や販売高により15億円程度の産業連関を生み出し、地域経済に大きく貢献している。
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活動の評価 熊本県では、平成11年から『くまもと21農業振興運動』を実施している。 この運動の理念は、「変革と共生」である。つまり、農業の現状を見つめ直すとともに消費者と生産者の顔の見える関係を構築し、農業県である熊本の元気を引き出そうというものである。 学校給食や乳製品加工、更には食肉加工、地元農産物を食材としたレストランの運営など、地域基幹産業の核にジャージー酪農を据え、付加価値の高い農業を目指しての活動は、食糧の国際化や農業担い手不足などの、当世の課題に正面から取り組んでおり、畜産であるが故に達成することのできる“総合性”を発揮している。 地域の特産品であるジャージー牛乳を中心に位置づけて、第6次産業化を実現してきた背景には、継続することの重要性とピンチをチャンスに変える発想の豊かさ、そして地域のコーディネーターとしての役割を発揮し、生産者と役場、地域をつないだ農協の活動は、今後もさらに発展が期待されるものである。 評価者(氏名 矢野信俊(熊本県阿蘇農業振興課長)
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