■■■ 肥育農家研修会 ■■■ 肥育農家研修会資料
経営技術課 圓山
● 理想的肥育経営の展開
理想的肥育経営の展開図

高生産性肥育の展開図

固定化負債の発生原因
| S.60年 | H.8年 |
農産物価格低迷 過剰投資 経営管理の不足 使用管理技術の不足 放漫家計・生活 病気・事故 自然災害 | 61.6% 17.2% 70.1% 8.2% 14.0% − 10.2% | 48.2% 30.8% 56.7% 47.9% 28.5% 19.4% 17.4% |
注1.60年:第一回農協信用動向調査 注2.H8年:JA畜産負債等調査(H9.8月、10県42JA)
肥育経営の収益性と対策(全国の平成10年生産費調査)
| 乳用種子牛 | 乳用種肥育 | 肉専用種 | 対策 |
収入(円) | 109,506 | 371,246 | 770,745 | 安楽性・観察 |
支出(円) | | | | |
素畜費 | 45,536 | 137,165 | 403,001 | 素牛選定 |
飼料費 | 49,788 | 192,598 | 207,657 | TMRセンター |
敷料費 | 2,806 | 7,628 | 12,414 | 戻し堆肥 |
光熱水道費 | 1,435 | 4,655 | 5,310 | |
衛生費 | 5,077 | 3,550 | 5,744 | 観察 |
公課費 | 587 | 2,725 | 4,982 | 低コスト |
建物費 | 2,690 | 7,606 | 11,017 | 低コスト |
農機具費 | 1,937 | 7,584 | 12,158 | 中古利用 |
その他 | 840 | 1,508 | 3,410 | |
労働費 | 19,411 | 37,878 | 98,778 | 効率省力化 |
費用合計 | 133,597 | 402,897 | 764,471 | |
副産物額 | 3,270 | 8,342 | 21,056 | 良質堆肥 |
生産費 | 130,327 | 394,555 | 743,415 | |
支利地第 | 1,225 | 4,680 | 13,835 | 実金利 |
生産費 | 131,552 | 399,235 | 753,840 | |
自利地代 | 2,249 | 9,315 | 19,355 | 4%金利 |
生産費 | 133,801 | 408,550 | 773,195 | |
所得(円) | | | | |
1頭当たり | -2,787 | 9,010 | 113,460 | |
1日当たり | − | 3,234 | 14,319 | 2万円目標 |
家族労働報酬(円) | | | | |
1頭当たり | -5,036 | -305 | 94,105 | |
1日当たり | | − | 11,876 | |
1頭当たり労働時間 | | | | |
| 11.75 | 23.17 | 65.69 | |
1戸当たり頭数 | | | | |
| 83.2 | 79.9 | 31.2 | |
出荷体重(kg) | | | | |
| 281.0 | 753.1 | 682.9 | |
出荷月齢 | | | | |
| 7.0 | 22.0 | 29.8 | |
肥育経営の収益性向上対策
収入増の要件 | 目標経済効果 |
1.高品質(血統・飼料・畜舎環境・削蹄・飼育期間) | 1〜20万円 |
2.枝重量(血統・飼料・畜舎環境・削蹄・飼育期間) | 1〜10万円 |
3.事故率 疾病 | 1〜3万円 |
4.堆きゅう肥 | 0〜1万円 |
5.飼養規模 | |
支出減の要件 | |
1.飼料単価の低減(単味、未利用飼料) | 1〜5万円 |
2.作業効率の改善(牛舎構造と配置、飼料調整と給飼) | 1〜5万円 |
3.肥育素牛の選定 | 1〜2万円 |
4.敷料材の確保 | 1万円 |
5.建物施設償却費 | 1万円 |
6.機械償却費 | 1万円 |
7.金利(家畜、飼料、施設等) | 1〜5万円 |
8.補助事業、制度資金の活用 | 1〜5万円 |
9.自給飼料費 | 1〜2万円 |
10.ふん尿処理経費 | 1〜2万円 |
生活費の見直し
肥育経営の問題点と対策
| 問 題 点 | 対 策 |
1 | 素牛価格、枝肉価格の不安定 | 子牛基金、畜安方 |
2 | 飼料価格の変動 | 飼料基金、TMRセンター |
3 | ふん尿処理 | 堆肥舎(扇風機)、自給飼料、耕種連携 |
4 | 収益性の低下 | 経営管理の充実、堅実な計画、資金繰 |
5 | 固定負債の増加 | 組織ぐるみの取り組み |
6 | 飼料自給率の低下 | コントラクターの推進 |
7 | 規模拡大の継続 | 経営計画の作成 |
8 | 後継者難 | 理想的肥育経営の実践 |
9 | 農休日の確保 | ヘルパー組織 |
10 | 素牛の確保 | 繁殖部門への参入、ネットワーク |
11 | 事故牛 | 個体観察し易い牛舎設計 |
肥育経営の取り組み条件
- 中・長期の生産計画の樹立(現状分析・認識)と経営管理能力・問題解決能力
- 将来を見越した牛舎用地と牛舎配置
- 技術水準の達成と記帳による技術分析能力
- 資金力・担保力
- ふん尿処理・流通体系の確立
- 労働力の確保
- 支援組織の充実
- 家族の理解と協力
肥育牛管理の基本
1.肥育牛の安楽性
1 | 飼育密度 | 1頭当たり5m3 競合回避 飼槽幅 |
2 | 飼料 | 品質、嗜好性、給餌回数、栄養濃度、水分 |
3 | 水 | 新鮮 |
4 | 床 | 乾燥、クッション |
5 | 換気 | 新鮮 |
6 | 蹄 | 削蹄(年2回) |
7 | 防暑・寒 | 畜舎構造と対策 |
8 | 害虫駆除 | 予防と駆除 |
● 素牛選定
- 月齢に応じた発育、子牛らしさ、十字部高、飛節の位置
- 血統 祖父母
- 品位、資質、体積、ボディコン、体上線、肋張り、肢蹄
- ふんの状態、活気
● 飼養管理
- 1の肥育牛の安楽性
- 駆除・削蹄(年2回)
- 去勢、除角、性分離
- 粗飼料飽食、自由飲水、コンプリートへの挑戦
- 多回給餌、栄養濃度・構成の設定(増体、枝肉構成、肉質、脂質への影響)
- 観察の徹底(食欲、活力・行動(採食)、反芻、ふん、鼻鏡、尿石)、一望の牛舎
- 定期測量
- 向上意欲、夫婦連携、基本に忠実
● 衛生対策
● 枝肉成績を決定する要因
品種、血統、性(去勢時期)、月齢、体重、資料構成、畜舎環境、気象環境、ビタミン等の多くの要因がありますが、肥育牛の安楽性確保は最大の要因です。
堆肥舎建設コストの工場部門別資材別のm2単価概要早見表
300m2(9m×4.8m×7室) 単位=円
| | 低価格 | 標準 | 高価格 |
基 礎 床 | エプロンなし | 2,000 | 2,500 | 3,500 |
本人施工(鉄筋なし) | 2,500 | 3,000 | 4,000 |
本人施工(鉄筋あり) | 3,000 | 3,500 | 4,500 |
業者施工(鉄筋なし) | 7,000 | 8,000 | 9,000 |
業者施工(鉄筋あり) | 7,500 | 8,500 | 10,000 |
壁 | 本人施工(土手) | 500 | 1,000 | 1,500 |
本人施工(廃材等) | 2,000 | 3,000 | 4,000 |
業者施工(ブロック2m) | 3,500 | 4,500 | 6,000 |
業者施工(ブロック2mベニ1m) | 4,000 | 5,000 | 6,500 |
業者施工(鉄筋コン2mベニ1m) | 5,500 | 6,500 | 8,000 |
業者施工(ブロック2mブロ1m) | 7,000 | 8,000 | 10,000 |
屋 根 組 み | 本人施工(なし) | | 0 | |
本人施工(パイプ) | 1,000 | 2,000 | 3,000 |
本人施工(廃材等) | 2,000 | 3,000 | 4,000 |
本人施工(通常) | 3,500 | 5,000 | 6,000 |
業者施工(廃材等) | 4,000 | 6,000 | 7,000 |
業者施工(通常) | 7,000 | 8,000 | 9,000 |
業者施工(高質塗装等) | 8,000 | 10,000 | 12,000 |
屋 根 | 本人施工(廃ビニール等) | 0 | 100 | 200 |
本人施工(タイベック等) | 150 | 300 | 500 |
本人施工(ストレート) | 800 | 1,000 | 1,200 |
本人施工(ガリバ等) | 1,300 | 1,500 | 1,800 |
業者施工(ストレート) | 1,300 | 1,500 | 2,00 |
業者施工(ガリバ等) | 2,000 | 2,500 | 3,000 |
合計 | 業者標準 | | | 27,000 |
堆肥化の主役となる好気性微生物の活動を活発にするための環境条件として栄養分、酸素、水分、微生物、温度、時間の6つを配慮する事が必要です。
● 繁殖牛放牧(芝型草地中心)への取り組み
繁殖牛1頭当たり20万円の所得が可能
● 飼料の特性
脂肪・肉への影響 | 飼料の種類 |
脂 肪 の 色 と 質 | 白く固めにする | 麦類、米、マイロ、甘藷、馬鈴薯、でんぷん粕、綿実油粕、フスマ、麦ヌカ、カブ、エンドウ、ソラマメ、イナワラ |
黄色にする | 大豆油粕、大豆、トウモロコシ、カボチャ、青刈り大豆、青刈りエンバク、オーチャード青刈り、ラジノクローバ |
柔らかくする | 生米ヌカ、大豆、大豆油粕、ナタネ油粕、アマニ油粕、トウフ粕、魚油粕、トウモロコシ、マメ科サイレージ、生草 |
適度の柔らかさ | フスマ、麦ヌカ、イネ科サイレージ、乾草 |
肉色 | 濃くする | 血粉、パーム粕、魚粉、アマニ油粕、カウピー、グルテンフェード、骨粉、ココナッツ粕、ビートパルプ、牧草、乾草、アルファールファミール |
淡くする | 馬鈴薯 |
味 | 良くする | 米ヌカ、フスマ、大豆油粕、大豆、米、マメ科牧乾草、スキムミルク粉、麦芽 |
うす味に | 根菜類、麦類 |
● コントラによる自給飼料の低コスト生産
● ロール乾物重量の把握
ロールの乾物重量の目安(単位=kg)
| 乾 草 | ヘイレージ、飼料イネ | サイレージ、稲ワラ |
1.0m×1.0m | 113 | 94〜102 | 79〜49 |
1.2m×1.2m | 195 | 163〜176 | 135〜163 |
● 低利用飼料資源の利用
- 経済性の検討
生産業者が処理する場合のコストはkg当たり焼却費10円、集配費5〜7円が基本になっている。
飼料価格は乾物当たりの栄養成分、消化率、嗜好性の把握が必要であり、3点の総合評価により評価すべきである。
小口は収集経費が割高、腐敗しやすいものは調整が必要、高水分は収集経費が割高、調整が必要などであり、労働経費や資材費を加味する。
混合調整や乾燥化する場合は、そのための経費(償却費・ランニングコスト・労働費等)を試算する。
飼料配合設計コスト(分析、設計)を考慮する必要がある。
- 畜産農家の考え方、対応
現在の飼料構成、家畜管理技術水準、期待されている飼料レベル、地域としてのまとまり、飼料配合設計者の有無等を検討する必要がある。
- 安全性の確保
添加剤や農薬などの有害物の残留性確認を通して家畜に対する安全性の確認が必要である。
- 生産性の安定
利用の留意点
- 粕類は主成分の抽出によって、残留している成分は原料の成分と大きく異なると共に、偏った成分となっている場合が多い。
- 栄養成分が不明なものについては、分析依頼するか専門家に推計してもらう。
- 飼料設計にあたっては、飼料全体での単価、栄養濃度、嗜好性、栄養バランス、蛋白質の分解性を考慮するが、数値化されていない嗜好性は特に注意が必要である。
TMRにした場合は嗜好性の悪い飼料が混合されると全体の採食量や生産性におおきな影響を与えます。
臭気のあるものについては、乳汁への影響が懸念されます。
- 食品添加剤や農薬などの残留確認
- 変質し易いものについては、添加剤の利用や調整保存についての検討
- 産廃としての処理経費、飼料として利用するまでの全体経費を含めて経済性の検討が大事である。
● ほいく、育成、肥育技術
今回県内で急速に30台ほど普及しているほ乳ロボットはIT化されえおり、省力化だけでなく、子牛個体毎にほ乳量やほ乳間隔を自由にコントロール出来るため、適量を多回給与出来るので離乳飼料の食い込みもよく、発育標準を上回る発育を示している事例も多く見られ、利用農家の評判も良好です。
子牛の育成
子牛の育成においては、飼養標準からも蛋白質の要求量が大きく、良質蛋白質の給与と共に、反芻獣としての機能が完成していない状況から、バイパス性の蛋白質の割合を増加させたり、過肥を防ぎ体高のある育成牛に育てる為に、TDNとCPのバランスに考慮が必要です。
高カロリー低蛋白質飼料は低体高の過肥牛になります。
高カロリー飼料を給与する場合は高蛋白質飼料を給与しバランスを保つと共に繊維やミネラル、ビタミンにも配慮すれば、伸び伸びとした育成牛になります。
肥育牛
肥育前半の5ヵ月程度は体構成上の骨、筋肉、内臓の発達を図るための飼料構成を心がけて、飼料全体が中カロリー・高蛋白質になるようにすると共に粗飼料の多給、ビタミンの確保が必要です。
現場ではビール粕の多給によって、カロリーや蛋白質が低くなり過ぎ、増体や体高筋肉(ロース芯)の発達に影響が出ている例が見られます。
肥育中期にビタミン制御方式を行う場合はビタミンを抑え、高カロリー・中蛋白質で管理します。
肥育後期は高カロリー・低蛋白質で管理します。
つまり、理にかなった飼料設計と飼料の嗜好性・価格・栄養価をふまえた飼料の組合せ、最後に家畜の反応である乳や肉の量や質からみた経済的飼料効果が上がる飼料設計が必要です。
● 補助事業の利欠点
補助事業(ハード)は最近補助率が下がったり、対象事業が少なくなっていますが、以下のとおり補助事業の利点・欠点と損得についてとりまてめましたので業務の参考にしてください。
1)補助事業の利点
- 自己投資額が少なくて済む
- 資金繰りが容易になる
- 自己投資効率が容易になる
- 迅速な事業展開が出来る
- 快適な畜舎環境が実現する
- 快適でシステム化された畜舎構造のための管理作業がスピーディーになる
- 耐用年数が長く期待できる
- 建物の修繕などが少なく管理が用意である
- 事業・経営効率が良くなる
2)補助事業の欠点
- 基礎工事等が過大投資になりがちである
- 事業開始まで時間がかかる
- 過剰システム化している場合は保守点検、修理に費用がかかる
- 不動産取得税(固定資産評価額の4%)、登録免許税(固定資産評価額の0.6%)が多くなる
- 毎年の固定資産税が(固定資産評価額の1.4%)が多くなる
- 原価償却費が圧縮計算されるので費用が少なくなり毎年の所得税が多くなる
経営分析の手順
- 書類の準備
青色申告、固定資産台帳(建物・施設・機械・成畜)、伝票、牛群検定成績等の準備
- 取りまとめ様式の準備
青色申告書、畜産会様式、科目別摘要明細等の準備
- 記入・集計
取りまとめ様式への記入・集計(労働時間の把握)
- 比較
農水省統計情報部の生産費調査・畜産会調査・指標等との比較
- 部門毎の比較
部門毎に按分して整理し、平均値・指標値との比較(ふん尿処理含む)
- 収益性の検討
時間当たり労働報酬、将来性・安定性、投資効率・利益率・配当
- 改善対策
繁殖、育成、肥育、泌乳、販売価格、飼料計算、作物収量、栄養価、飼料効率等
- 改善対策
部門毎、技術毎
- 改善計画の実行
- 改善結果の評価
- 普及員の役割−政策や技術の経済性を検討し、経済的な評価と組み立てを行う
- 1時間当たりの労働所得2000円の達成
- 労働時間、地代、資本利子の把握、労働報酬・利益率の計算
- 負債=借入金−資産
- ふん尿処理のコスト試算
- 自給飼料はコスト試算と給与量・飼料価格の確認
- 減価償却費は法定耐用年数と実際の予想耐用年数の使い分ける
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