T.最近の牛乳製品の需給動向
(1)牛乳・乳製品の需給構造の概要(平成14年度)


(2)生乳の需給動向
- 生乳生産量は、小規模農家の離脱による減少分を規模拡大農家が補いきれなかったこと等により、平成9年度以降減少傾向で推移してきた。
- 14年度については、都府県で前年度に比べて僅かに減少したものの、北海道では、増産対策の実施、加工原料乳生産者補給金単価の引き上げ等により、やや増加し、全国では6年ぶりに増加に転じた。
15年度(4〜11月)については、昨年度に引き続き、都道府県では前年に比べ1.0%減少したものの、北海道で1.9%増加し、全国では0.3%の増加となっている。
仕向別にみると、飲用牛乳等向けは1.1%減少、乳製品向けは2.8%の増加となっている。

(3)牛乳・乳製品の需給動向
ア 乳用牛乳等
- 乳用牛乳等の生産量は、牛乳及び加工乳が減少し、乳飲料及びはっ酵乳が増加する傾向にあったが、12年の加工乳等による食中毒事故以降、加工乳が大幅に減少し、乳飲料も伸び悩んでいる。
- 14年度については、乳用牛乳等の表示の見直し等により、牛乳が前年度に比べやや増加したのに対し、加工乳及び乳飲料は減少した。また、はっ酵乳はかなり大きな増加となった。
- 特に加工乳については、12年の食中毒事故を契機にほぼ半減となる勢いで減少しており、最近の脱脂肪粉乳過剰在庫の一大要因となっている。
- 15年度(4〜11月)については、牛乳は0.4%の減少、加工乳は11.9%の減少、乳飲料は1.4%の減少となっている。また、はっ酵乳についても1.6%の減少となっている。

イ 主要乳製品(バター・脱脂粉乳)
- バターは、14年度については、生産量が前年度に比べてやや減少した。また、消費量は出回り量が一時的に増大した13年度に比べるとやや減少したが、平年に比べれば堅調に推移した。
15年度(4〜11月)については、生産量は前年並みであるものの、消費量は1.9%増加している。
なお、カレントアクセスによる輸入バター10,400トンが15年12月までに3回に分けて売り渡された。
- 脱脂粉乳は、14年度については、生産量が前年度に比べてわずかに増加し、また、消費量は前年に比べわずかに増加したものの、加工乳等の需要は低迷が続いている。この結果、14年度末の在庫量は対前年比7.7%増の8万800トンに増大した。
15年度(4〜11月)につていは、昨年度に引き続き需要が低迷しており、生産量は前年に比べ2.1%増加、消費量は4.4%減少し、在庫量は前年度同期比20.3%増の8万200トンまで増大している。

(4)乳製品在庫量の推移
- バターの在庫は、小口業務用を中心に需要が比較的堅調なこと、ハイファット・クリームチーズの輸入が減少したこと等により減少傾向にある。
- 脱脂粉乳の在庫は、12年の加工乳等による食中毒事故以降、加工乳等の原料としての需要が著しく減少しているため増加傾向にあり、14年度末で消費量の約6ヵ月分に相当する約8万トンとなった。さらに、15年度末には10万トンに及ぶ見通しとなっている。

U.酪農経営の動向
(1)飼養動向
- 乳用牛飼養戸数は、近年、小規模層を中心に毎年5%強の減少が続いてきたが、平成15年は3.9%(北海道2.1%、都道府県4.6%)の減少に留まった。
- 乳用牛飼養頭数は、昭和50年代後半以降概ね横ばいで推移してきたが、平成5年以降減少に転じ、平成14年度は増加に転じたものの、15年には再び0.4%の減少となった(北海道0.5%増、都道府県1.2%減)。
また、北海道の飼養頭数が都道府県の飼養頭数を上回った。
- 一方、飼養規模の拡大は確実に進展しており、15年の成畜飼養頭数50頭以上層の頭数シェアは、北海道で75%、都道県で37%。

(2)酪農経営の所得状況
- 酪農経営の所得の推移を見ると、一戸当たり所得では、北海道が1,000万円程度、都府県が650万円程度となっており、多作目に比べると高い水準で安定的に推移している。
これは、一時間当たりの所得こそ北海道が1,400円程度、都府県が1,300円程度と他作目に比べて特に高くはないものの、季節を問わず年間を通じて安定的な生産活動が可能であり、かつ、収入の大半を占める生乳価格が安定的に推移しているためである。
- 平成13年の北海道の酪農家の所得の現状をみると、BSEによる影響が懸念されたが、一戸当たりの平均所得は1,083万円であり、そのうち、50〜80頭層は1,200万円を超え、80頭以上層になると1,700万円を超える水準にある。
また、一時間当たりの平均所得は1,604円であるが、80頭以上層になると2,200円を超える水準にある。

(3)担い手の確保状況
- 作物別の主副業別農家の農業産出額に占める割合をみると、生乳部門における主業農家のシェアは96%となっており、他品目に比べ主業農家への生産の集中が顕著である。
主業農家: |
農業所得が主(農家所得の50%以上が農業所得)で、 65歳未満の農業従事60日以上の者がいる農家 |
準主業農家: |
農外所得が主(農家所得の50%以上が農外所得)で、 65再未満が農業従事60日以上の者がいる農家 |
副業的農家: |
65歳未満の農業従事60日以上の者がいない農家 |
- 50歳未満の経営主がいる経営の割合は、酪農で39%とその他経営に比べて高く、また、農業が主な仕事である同居後継者がいる酪農経営の割合も25%とその他経営に比べて高くなっている。

V.加工原料乳生産者補給金制度について
- 平成13年度からこれまでの不足払いによる算定方法(保証価格−基準取引価格)を改め、米麦や畑作物と同様の一定のルールに基づき毎年度設定する一定の単価により助成する新たな制度に移行。
- 13年度は制度の円滑な移行に配慮し、前年同の10.30円に据え置き。14年度は変動率方式を適用し、BSE発生以降の子牛や廃用牛価格の低下を織り込んで、前年度から70銭引き上げの11.00円。
15年度についても変動率方式に基づき、10.74円で決定。
- 14年度の限度数量は前年度よりも7万トン削減して220万トンしたが、飲用需要が堅調であったこと等から15万トンの未達となった。
15年度については、最近の生乳の需給状況等を考慮し、前年度よりも10万トン削減し、210万トンとした。


W.乳製品に係る国境措置
(1)UR合意前後の乳製品の輸入制度
- UR合意前は、指定乳製品等(脱脂粉乳・バター等)については輸入数量制限(IQ)により国内への影響を回避。
UR合意後は、輸入数量制限措置を関税化し、高水準の関税相当量(TE)を設定するとともに、基準期間の輸入実績等を基にカレントアクセス数量、関税割当数量を設定。これらの措置により、国内への影響を回避。
- なお、ナチュラルチーズ(NC)の輸入は、昭和26年以降自由化されているが、国産NC生産振興の観点から抱き合わせ制度を昭和45年から実施しており、現在は国産1:輸入2.5の比率で運用している。
(抱き合わせ:国産NCを飼養する場合に輸入NCの輸入関税率を無税にする制度)

(2)乳製品の関税割当
- 従前の輸入収量制限品目(バター、脱脂粉乳等)については、輸入数量制限を関税相当量(TE)に置き換え(関税化)、この関税相当量を、1995年以降の6年間の実施期間において、各年等量ずつ合計で15%削減することを約束した。
- 関税相当量が高水準に設定されているため、これらの品目の輸入価格は国内の乳製品価格を大きく上回り、関税相当量を支払った輸入(一般輸入)はほとんど行われていない。

(3)カレントアクセス数量の設定
UR合意により関税化された品目については、1995年以降の6年間の実施期間において、基準期間(昭和61〜63年度)の平均輸入相当分を毎年輸入することを約束した(カレントアクセス)。
また、これらの品目のうち、従前の国家貿易品目については、農畜産業振興事業団による国家貿易体制を維持した。
なお、平成7〜9年度においては、脱脂粉乳の需給ひっ迫に対応し、農畜産業振興事業団は脱脂粉乳の追加輸入を行った。

1.乳業の概要
- 我が国乳業は、牛乳・乳製品の堅調な需給を背景に、酪農とともに発展。食品産業の重要な一部門としての地位を確立し、平成13年度の製造出荷額は2兆2千億円。近年ほぼ横這いで推移。
- 乳業工場数は、減少傾向で推移しており、1日当たり生乳処理量2トン以上の工場は、平成14年は、乳製品工場及び飲用牛乳工場で332工場。
- 乳業の収益性は、他の食品産業と比較しても低い水準にあり、平成13年度は、牛乳消費の伸び悩み、小売り価格の低下により一段と厳しい現況。
14年度においては、飲用需要の回復もあって、大手乳業は12年度の水準まで回復。
○競合飲料の販売数量と販売価格の動向
- 主要量販店での各種飲料の販売数量の動向(POSデータ)を見ると、最近、茶系飲料の伸びが著しく、13年度で牛乳を上回り、14年度も同様な状況で推移。
- 販売価格の動向を見ると、茶系飲料等競合飲料とともに低下経過傾向で推移してきたが、14年度はわずかながら上昇。


2.乳業の再編・合理化
- 1.乳業の合理化目標
- ○酪農及び肉用生産の振興に関する法律に基づく「酪農業及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」(平成12年4月公表)において、平成22年度を目標とする乳業工場数の目標とする乳業工場数の目標を設定。
○また、酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針HACCP手法の普及についての合理化目標も設定。
- 2.乳業の再編・合理化実施状況
- ○乳業再編整備等対策事業の実績は、平成8年度から14年度までで廃止が107工場、新増設が28工場となっており、一定の成果。
○乳業工場の再編・合理化の進展もあり、HACCPの承認工場は6割の水準となっているが平成12年の加工乳による食中毒事故以来、HACCPの取得は停滞している状況。

3.乳業工場数の推移
1.乳用牛乳工場
- 一日当たりの処理量2トン以上の乳業工場数は、近年穏やかに減少し、平成14年度では290工場
- 一日当たりの処理量規模別の推移を見ると、乳業再編整備等対策事業の実施もあり、2〜10トン未満の規模の零細
- 小規模の工場の減少が顕著であるが、中規模以上の工場はほぼ横這いで推移し、規模拡大が着実に進展
- 今後の国際化の進展を展望すれば、引き続き中規模以上の乳業工場を中心とした再編・合理化が必要

2.乳製品工場
- 近年、乳製品工場数はほぼ横這いで推移しており、今後の国際化の進展を展望すれば、昭和30年代、40年代設置された老朽化した工場を中心に、再編・合理化の推進が必要

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