■■■ シバ草地の現状と今後の取り組みについて ■■■
 熊本県天草農業改良普及センター技術長 浅田芳彦


1.天草地域におけるシバ草地の歴史について
 天草地域は、耕地面積割合が約10%で、そのうち果樹園が約1/4を占めるように、平坦部の少ない厳しい地形条件の中で農業が行われています。
 このように土地条件としては厳しい場所ですが、天草の繁殖雌牛飼養頭数は、牛肉の輸入自由化後に急激に減少したものの、子牛価格の上昇に伴い、平成8年を底に増加傾向にあり、毎年150頭前後増えています。
 この増頭の要因のひとつとして、放牧の効果があるものと思われます。

図−1 天草地域の繁殖雌牛頭数と子牛市場価格の推移

 天草での放牧は昭和57年に始まりましたが、阿蘇のような広大な土地もなく、雑木山を伐採しての放牧でした。
 しかも、放牧という阿蘇の寒地型放牧のイメージが強く、蹄耕法で造成した山に寒地型牧草を播種したものの、見事に失敗しました。
 その後、色々検討したところ、シバ型の草が天草には合うと言うことで、天草でのシバ草地がスタートしました。
 しばらくは、放牧に取り組む農家は少なかったが、天草で最初に放牧された場所が 30度の傾斜度の所であったこともあり、よほど急斜面でない限り放牧は可能であるということから、ここ7〜8年で放牧に取り組む農家が増えてきました。
写真−1 天草での最初のシバ草地写真−2 傾斜30°の草地


2.管内の草地面積等について
 シバ草地面積は約66haで、19戸(グループ)が放牧を行っていますが、ここ2年で約13ha増加しています。
 この他の放牧方法として水田放牧がありますが、天草地域は早期水稲地域であるため、水田裏としての放牧利用が困難で、耕作放棄地の利用がほとんどとなっています。
 そのため、面積は約8haとなかなか増えない状況にあります。
 この他にも草地造成を行った放牧ではありませんが、雑木山を運動場的な形で利用している面積が約8haあります。

写真−3 耕作放棄地を利用した水田放牧

3.耕作放棄地及び山林を主体とした放牧
 天草地域は果樹中心の農業が行われていましたが、昭和40年代〜50年代のみかんの計画生産、昭和63年のオレンジの輸入自由化、果樹農家の廃業により樹園地の荒廃が進みました。
 そこで、耕作放棄地の有効利用方法として、放牧の検討が始まりました。
 その理由として、樹園地は急傾斜地に造成されていたためテラスがかなり狭く、新たにハウス等を新設するには、かなりの土地造成費が必要であることから、莫大な費用が必要となります。しかし、最初に始められた放牧地が雑木山の急斜地であったことから、地形的にはそのまま生かし、放牧により景観も良くなることから取り組まれました。
 また、耕作放棄地に隣接する雑木山もあわせて、シバ草地として利用されています。
写真−4 放牧前後の風景写真−5 シバ草地(耕作放棄地後)

シバ草地造成前の地目


4.シバ草地の造成法
 県内で行われていた草地造成方法は、阿蘇の牧野のように大型重機の耕起に始まり、その後も機械作業によって行われていましたが、天草地域の樹園地等は大型重機を入れて造成すると費用をかなり要することから、以前阿蘇地域でも一部で行われていた火入れ直播と蹄耕方を利用して造成を行っています。
 まず、牧柵を張り牛による下草刈りを行い、庇陰樹に利用できる樹木だけ残して伐採する。その後、枯草等を除去した後、土が露出したところに播種して、さらに牛に踏ませます。(以前は火入れを行ったところもあるが、現在は行っていない)
 そのため、草地造成完了までは2〜3年を要する。
写真−6 草地造成前写真−7 大きな樹木等伐採後
写真−8 放牧後下草が減った状態写真−9 飲水は果樹園跡のタンクを利用
 
写真−10 放牧後播種前 

5.放牧による規模拡大
 天草における草地面積は、阿蘇地域の1万haに比べると微々たるものでありますが、平成7年頃から増え、放牧農家の飼養頭数もかなり増えてきました。
 現在放牧に取り組んでいる農家の7〜8割は、自宅近くの耕作放棄地や雑木山を利用して放牧していることから、比較的目の届く範囲に放牧牛がいるという安心感と、労力の軽減の効果があり、また子牛価格の上昇効果もあり、増頭に結びついていると思われます。
 また、冬から春にかけて水田の耕作放棄地を利用し周年放牧に取り組み、現在所有する牛舎には全く入りきれない頭数を飼養しているところもあります。

表−1 シバ草地面積と繁殖雌牛飼養頭数

6.これからの放牧の推進
 天草で放牧がはじまってから22年という歴史を持っていますが、増えだしたのはまだ7〜8年前です。
 最近は、シバの生育の良い時期も大牧区で放牧していることもあり、草地が荒れてきているところも見られ、時期的には小牧区による放牧の検討が必要となっています。
 また、現在でも放牧に取り組む計画が約30haあり、他にも関心のある農家がかなりあると思われます。
 しかし、今後シバ草地での放牧を進めるうえで、牛舎の近くに適当な場所があれば問題はありませんが、普及センターや町等で進めている耕作放棄地(樹園地跡:借地)の利用になった場合、管理場所が2ヶ所になり、逆に労働時間とコストが増えることも考えられます。(妊娠牛のほとんどが飼養できるだけの面積が確保できれば別であるが)
 そこで、シバ草地の放牧が可能な12月〜3月の期間を、今後も増えるであろう水田等の耕作放棄地を利用した周年放牧による増頭を期待しています。
 天草地域は、中山間地域などの生産性の低い耕地が多いことや高齢化が進んでいること、さらに、熊本都市圏から遠距離にあることなど不利な条件にありますが、逆にこのような土地をうまく利用した放牧により、天草黒牛のさらなる振興を図っていきたい。




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