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1)対象経営……酪農ヘルパー及びヘルパー利用酪農家集団
2)対象集団名及び所在地
  「熊本県酪農ヘルパー利用組合」 熊本県熊本市水道町15ー22
熊本県酪農業協同組合連合会内

3)活動開始の動機・背景
ア.
熊本県における酪農ヘルパー制度は、昭和43年に「酪農労働力対策実験事業」の指定を受け、玉名 酪農組合(単協)の事業として同年12月1日より活動を開始しており、冠婚葬祭等により搾乳労働ができない場合、疾病・傷害等の一時的事故により搾乳労働ができない場合、搾乳労働力の維持増進上必要な休業をとる場合、飼養管理技術の研修習得のため搾乳労働ができない場合等の理由による利用状況となっていた。

イ.
その後、県下の酪農経営の規模拡大並びに労働力の周年拘束等の酪農の特殊性が深刻な問題化し、全国的な要請活動を行うとともに、熊本県酪連においては昭和50年8月よりヘルパー制度の確立実現に向けた検討会・研修会・講習会等を実施し組織育成を行った。

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地域酪農では、飼料作付けを主体とした土地利用型酪農地帯であるが、経営者の高齢化も一部進んでいることから、地域酪農の継続を図るため及び導入する大型機械の効率的な有効活用を図るため、作業受託を取り入れた活動を計画した。

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この間、酪農経営の特殊な周年拘束労働はもとより、高齢化及び更なる規模拡大の進展、養育に伴う他産業並の休日確保等の利用状況の多様化やヘルパー利用要請の増加が顕著となったことから、酪農ヘルパー事業の拡大・強化を図るため、行政及び関係機関へ要請を行った。

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この結果、平成2年6月に「酪農ヘルパー事業円滑化対策事業」が設置され、事業推進・基本組織構想のとりまとめ・酪農ヘルパー要員の募集養成・熊本県酪連の組織支援体制の整備等を行い、平成3年4月に、酪農経営の年中無休の解消による労働の改善及び後継者対策として、ヘルパー事業の普及定着及び円滑化を図ることを目的とし、専門の搾乳技術者により飼養管理作業を代行させることによって、酪農家の周年拘束労働を改善し定休日を設け、魅力ある酪農経営を樹立するため、「熊本県酪農ヘルパー利用組合」を設立した。

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熊本県の酪農は、47都道府県中平成10年2月次乳用牛飼養頭数55,200頭で第6位、平成9年度生乳生産量は25万4千トンで第7位になっており、酪農家戸数1,170戸である。また、熊本県酪連のヘルパー事業開始昭和52年時は、酪農家戸数3,089戸・乳用牛飼養頭数52,421頭であったが、「熊本県酪農ヘルパー利用組合」設立時の平成3年は、酪農家戸数1,574戸・乳用牛飼養頭数61,274頭・生乳生産量23万2,501トンとなっており、酪農家戸数は減少したものの確実に規模拡大が進展している。

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このような中で、熊本県の酪農生産基盤の維持・継続を図る一つの手法として、酪農ヘルパー事業への取り組み・支援による酪農経営の特殊な周年拘束労働からの解放と他産業並の定休日の確保は、酪農の過重労働の軽減のみならず、魅力ある酪農経営の確立及び酪農後継者・継承者の確保のためにも 重要な支援事業と位置づけている。

4)支援指導の内容
 熊本県においては、「ゆとりと魅力ある農業農村」の実現に向けて各種の施策を展開している。自立経営体や生産組織等の多彩な担い手の育成、熊本県の特性を活かした農業生産の展開、地域の実態に即した生産基盤の整備や農村地域の生活環境の整備等について重点的に取り組むこととされている。
 熊本県の酪農ヘルパー事業にあっては、「多彩な農業生産の展開」として、高品質低コスト農業生産と調和しながら、労働時間の短縮、生産環境の改善、作業の省力化などを進めながら、「国際化に対応した足腰の強い畜産経営の確立」を目指した「ゆとりある畜産経営確立対策事業」として位置づけされている。
 このようななか熊本県の酪農は、酪農家戸数は年々減少するものの、堅実な規模拡大により全国第7位西日本一の生乳生産量を誇っている。また、明日の酪農界を支える精鋭後継者が北海道に次いで多く毎年20名程度が就農している。これも、ゆとりと魅力ある酪農経営が熊本県において進展している賜であり、他産業・他農業とは異なる特殊な酪農経営の過重労働の解消と安定した収益の確保が図られているからである。
 このことは、酪農組織として熊本県酪連の酪農家支援の結果であり、酪農ヘルパー要員の安定確保・熊本県酪農ヘルパー利用組合への組織指導支援活動によるものであるといえる。

【審査委員会の評価点】
・周年拘束性が高かった酪農経営に、県酪連主導によって全国に先駆けて県下一円を網羅した定休・不定休型のヘルパー組織を設立し、労働環境の改善を図っている。
・酪農ヘルパー組織の定着化を図るために「酪農ヘルパー事業円滑化事業」等の関連補助事業を活用するとともに、熊本県酪連独自の助成対策及び事務費軽減のため専任の熊本県酪連職員を配置する等の支援を行い利用酪農家の料金負担軽減を図っている。
・酪農ヘルパーの安定確保とヘルパー技術の高位平準化を図るために農業高校等との連携を密に行い、ヘルパー希望者の発掘を図るとともに、ヘルパーとして必要な専門的高度技術を習得させるためにヘルパー養成研修計画を樹立し支援している。
・酪農ヘルパーの身分の保証・収入の確保を図るため、定休型の義務づけによる十分な所得確保を図るとともに中小企業退職金共済事業団の退職金共済制度の利用を図っている。
・ヘルパー作業時に生じる各種のトラブル(機械等の誤操作、家畜の管理ミス等)よる損害保証に対応するため保険加入を行い、酪農家やヘルパーの経済的負担・不安を解消した。
・酪農家が傷病・事故・出産等により長期に渡りヘルパーを利用せざるを得ない場合に、経済的負担を軽減(通常の50%)させるために傷病時利用互助会を設立した。
・酪農ヘルパー利用組合は設立以来その利用実績が増加しており、また、新規ヘルパー要員も確実に充実されている。今後は更に酪農ヘルパー利用組合の運営の安定化と、ゆとりある酪農経営確立のために、熊本県酪農業協同組合連合会が果たす支援指導の役割とその成果に対する期待が大きい。

 


 

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