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 上田尻牧野組合は、入会権者で構成される共同利用牧場であり、阿蘇北外輪山上に広がる豊かな草資源を活用したあか牛生産に取り組んでいる。
 上田尻牧野組合では、「牛は草で作る。」を基本理念として、先進的な草地管理や組合運営に取り組み、地域でのモデル牧場の役割を果たすとともに、組合員の子牛生産だけに留まらず、前期に粗飼料を多給した肥育技術を取り入れた一貫生産方式を導入し、愛知県犬山市の食品会社と生産委託契約を結び産直活動を十数年にわたり継続している。
 さらには有志4名で食肉加工所を運営し、組合員が自ら生産し肥育したあか牛を『うぶやまさわやかビーフ』として地場消費の拡大を図っている。
 放牧と採草を中心にした土地利用型肉用牛生産方式とあか牛の産直に取り組み、消費者との連帯や肉用牛生産を通じた草原の景観維持や水源涵養などの農業の持つ多面的機能を発揮させるなど、新農業基本法が指し示す方向を牧野組合が開設された昭和50年代から営々と実践し、その間の幾多の困難を創意工夫と協調により乗り越えてきた。これらの活動は、今後当地域の肉用牛生産が進むべき方向の一つを提示しており、豊かな草資源とあか牛を組み合わせることにより中山間地ならではの活動を展開し地域の活動源となっている。

 

 


  
 ■1.上田尻牧野組合の概要
 上田尻牧野組合は、上田尻地区の入会地480haに入会権を持つ48戸の信頼を基に、入会権の再編整備を図り、昭和54年の広域農業開発事業をきっかけに誕生し、48戸の入会権者のうち24戸が参加して草地開発に取り組み、生産性の高い肉用牛生産を目指した。発足当初、家畜飼養頭数は牧野面積280haに対し171頭であったが、現在は21戸が繁殖牛及び肥育牛併せて370頭程度を飼養している。
  

 


 

 ■2.先進的草地管理技術の取組と阿蘇地域の肉用牛実証展示牧場
1)集団管理体制
 牛は草で作るを基本理念として、草地管理と個別経営との労働競合を回避するため、役割分担を明確にした体制により効率的な牧野管理と民主的な牧野組合運営を行っている。
2)先進的な草地管理
 現在では、周年放牧の素材技術として定着しつつあるASP(Autumn Saving of Pasture)による放牧期間延長技術(牧草の3番草を立毛状態で草地に備蓄し、越冬飼料とすることにより放牧期間を延長する技術)の活用や2群後追い放牧(牛の栄養要求度に応じて牛群を構成し、
子付き牛などの栄養要求の大きいものを放牧した後に、妊娠初期牛などの栄養要求の少ないものを放牧して牧草の有効利用を図る方法)の実施、混在草地造成(牧草と野草の生育特性を利用して、飼肥と放牧のコントロールにより野草地を緩やかに牧草地に変えていく草地造成方法)、金肥の節減と地温上昇による早期の芽だしを目的にした冬期の堆きゅう肥散布など早くから九州農業試験場など関係機関との連携により現地実証試験に取り組み、継続して阿蘇地域の草地管理の実証展示的役割を果たしている。
3)牧野管理が守る、阿蘇の「緑と水」
 牧野組合は放牧、採草、野焼き、飼肥といった一年を通した適正な管理により、阿蘇地域特有の草原の景観維持や水源涵養に貢献し、農業の多面的機能を発揮している。
4)一環経営と産直
 牧野組合では、子牛価格の変動にも耐えられる安定した繁殖生産経営が出来るよう、組合員や他の農家の子牛を1頭25万円で購入し、牧草を多給した肥育即ち「健康」をキーワードにあか牛の肥育に組合で取り組んだ。肥育牛は愛知県犬山市のS食品に毎月5頭を契約出荷するほか、定期的に都市部の消費者を牧場に招いたり、組合員が消費地で消費者との意見交換を行うなど、消費者・生産者との交流を継続して図り山村や農業への理解に一役かっている。
5)『うぶやまさわやかビーフ』地場消費促進の展開
牧野組合員等が共同で食肉加工所を設け、あか牛の地場消費への供給体制を確立してきた。
産山村で生まれて草原を走り回ったあか牛に、牧草を腹一杯喰わせ込んだ『さわやかビーフ』即ち、本物のあか牛が地元の観光施設や民宿などに提供されており、地場消費の拡大促進につながっている。 

 

 

 

 


 

 阿蘇地域は九州のほぼ中央部に位置し、標高400mから1,500mのなかに6町6村から構成されている。阿蘇地域を5本の一級河川が源としており、中九州地域の水ガメとして位置づけられている。総面積12万haうち牧野が約20%(2.3万ha)を占め、牧野を活用した肉用牛繁殖生産(主に褐毛和種)盛んに行われており、阿蘇地域で県下の約50%の繁殖牛が飼養されている。近年子牛価格の低迷や高齢化の進展により繁殖牛の飼養頭数は減少傾向にある。
 産山村は阿蘇北外輪山上に位置し、広大な瀬の本高原の一角にある。標高480m〜1,050mの高冷地であるため、農業では狭い農地と広大な原野を有効活用した肉用牛生産を柱にした複合経営が展開されている。
 草原特有の景観や水、さらには温泉資源にも恵まれていることから観光と農業の複合産業化を目指し、施設整備も進みつつある。
 村の総面積6,072haのうち約70%が山林で占められており、耕地面積は約20%となっている。耕地面積1,100haのうち50%が牧草地となっている。
 総人口は1,900名でここ数年推移している。約半数が農林業に従事しており専業農家は全体の約3割を占めている。
 


 


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