ジャージー牛乳を活かした小国郷酪農の
第6次産業化への取り組み

熊本県阿蘇郡小国町阿蘇農業協同組合小国郷営農センター


1.地域の概況


 小国郷地域は、九州のほぼ中央部に位置し、標高500m程度の高原地帯である。熊本県では最北端となり、大分県に隣接し、阿蘇外輪の連なる辺縁部に広がる地域である。九州最大の水量を誇る筑後川の源流域でもあり、経済活動や地域的、歴史的につながりの深い小国町と南小国町を併せて「小国郷」と呼ばれている。
 九州山脈の「屋根」に位置しているため高冷地の気候を呈し、年間降雨量は2,300mmと多い。多雨多湿の気候は森林の生育に適しており、総面積の約70%は山林が占める農山村地域である。
 この地域の農業は、稲作、畜産に加え、高冷地の気候を利用して大根、ほうれん草の栽培が盛んに行われている。また、多雨と土壌条件を利用して、明治時代以降積極的に造林が進められ、「小国杉」として知られる林業が基幹となっている。
 小国郷における平成13年度の農畜産物取扱高は全体で3,592,494千円となる。その内訳は、ほうれん草560,224千円、牛乳549,996千円、大根524,682千円、米521,720千円となっている。

JA阿蘇・小国郷取扱高のシェア

 農業以外の産業としては、観光地として、九州を代表する黒川温泉、杖立温泉という2大温泉地を抱えており、福岡県をはじめとして、全国から、年間約62万人の観光客が訪れる。特に、最近では黒川温泉の人気は高く、温泉地として5年連続九州トップの座を獲得している。
 



2.地域振興活動の内容

(1)活動開始の目的と背景

 昭和20年代後半、小国郷地域における農家の収入源は、米と肥後あか牛(褐毛和種)の子牛販売代金に小国杉の山仕事の賃金が中心であったことから過疎化が進んだ。これに歯止めをかけるため、当時、小国町長兼旧小国町農業協同組合長の河津寅雄氏は、農村活性化のため新規作目の導入等を検討していたが、昭和30年に、阿蘇地域全域が「阿蘇山麓集約酪農地域」として国の指定を受け、阿蘇地域の広大な原野の開発構想を打ち出した。
 そこで、農家の所得向上と生活の安定、さらには地域経済の発展に寄与することに期待を寄せ、小国郷において利用度の低い原野(入会地)を活用し、毎日、現金収入を得ることのできる酪農を導入することとした。
 その当時、県内の酪農は既に乳量の多いホルスタイン種が定着していたが、小国町農協では、この地域の地理的条件や気候風土等に適し、草の利用性が高く栄養価の高い牛乳を生産すること、さらには、体が小さく、毛色があか牛に似ており、農家に馴染みやすいことなどの理由から、ジャージー種の導入を決定した。
 この導入には、小国町農協が世界銀行から融資を受け、昭和32年にオーストラリア、ニュージーランドから98頭を輸入し、酪農家99戸が飼養を始めた。これは戦後経済復興に向けた山村地域における一大事業への挑戦でもあった。その後、昭和36年までの5カ年間で合計1,033頭の牛を輸入した。
 このことにより、小国町農協のみならず県も町も一体となったジャージー酪農の普及定着化を試みることとなった。

 


(2)具体的な活動の内容と成果

1)ジャージー牛の産地育成
  1. 公共育成牧場「三共牧場」の役割
     ジャージー牛を導入した当時は、乳牛自体が珍しかった時代でもあったことから、酪農家の飼養管理指導及び技術の定着を図るため、昭和37年にパイロット的役割を担う公共育成牧場「三共牧場」(面積60ha)を開設した。三共牧場は、酪農に欠かすことのできない家畜飼養管理や草地管理を農協職員自らも体得し、酪農家指導の拠点として、さらには、ジャージー牛の育成牛生産に努めた。このようなことから、三共牧場は極めて優良な管理が行われたため、開設3年目の昭和39年には第3回全国農業祭において天皇杯を受賞し、地域の酪農家に誇りと希望を与えた。
     その後も、三共牧場は、ジャージー牛の増殖と改良という大きな使命を担っていながら、オーストラリアから輸入した貴重なジャージー牛の後継牛を育成・供給するとともに、人工授精が普及するまでは、種雄牛を繁養し繁殖生産の拠点となった。
     平成に入り、地元小中学生の体験教育の一環として牧場での酪農体験学習、消費者との交流などを行い、時代の要請にあわせた重要な役割を果たしている。

  2. 新たな泌乳能力向上への取り組み
     オーストラリアを産地とするジャージー牛は軽量な体型で泌乳能力の向上は期待できないとの諦めがあった。しかし、泌乳能力の向上が経営改善の有力な方策であるとの信念から農協では、平成2年にアメリカ・カナダタイプの大型ジャージー牛を導入するとともに牛群検定にも取り組んだ。
     導入牛選抜のために渡米した時、従来ジャージー牛には不向きと信じていたTMR給与が当たり前に行われていることを知り、グラスサイレージを主体としたTMRを早速取り入れた。これらの取り組みは、泌乳能力を大きく伸ばし、このことが生産拡大に貢献した。

  3. 規模拡大と乳量の増加
     生産者、県、町、農協など関係者が一丸となって、ジャージー牛導入後の育成、改良、技術普及・定着等を図った結果、導入後45年を経過した現在では、飼養戸数は一時512戸まで増加したが26戸に激減した。飼養頭数は、約1,200頭から620頭まで減少したが、平成に入り頭数も回復し、いまでは1,020頭となっている。

    飼養戸数と頭数の推移

    1戸当たりの飼養頭数については、導入当時は2.1頭であったが、現在では39.2頭となり着実に規模拡大され、ジャージー酪農が専業化された。

    1戸当たり飼養頭数の推移

    さらに、1頭当たり乳量については1,900kgから6,000kgに飛躍的に増加した。
2)独自の販路開拓と商品開発

 ジャージー牛導入後、福岡市や北九州市などの大消費地に生乳で供給していたが、地元での消費拡大を図るため、牛乳処理場を建設し、瓶詰牛乳を町内中心に販売をした。
 だが、高価な牛乳の販売は容易ではなく、小国町と南小国町の支援により、将来大きな消費者である児童、生徒を対象とした「学校給食」を中心に牛乳の消費拡大を推進するとともに、黒川・杖立温泉の旅館への販路確保にも努めた。
 しかし、昭和50年代には、全国的な牛乳の供給過剰が小国郷酪農を直撃した。その当時、ジャージー牛は「杉を食う」との陰口が囁かれはじめ、飼養農家数も急激に減少した。
 県内における牛乳流通の大勢は、ホルスタイン種であるが、現在も小国郷の牛乳は全てジャージー牛で占められている。ジャージー牛乳の特性を活かした販売をするためには、農協が中心になり独自の流通を手がける必要があり、「生産から消費者のテーブルに届く」まで全ての過程で農協の力が求められた。
 昭和53年、生乳生産量の伸びに反して、加工乳比率が高まる中で、飲用乳として販売促進を図るため、瓶詰牛乳から輸送費コスト軽減を目的に紙パック詰め工場を建設し、熊本市内や福岡県内のスーパー向けにジャージーブランド牛乳の販売促進を開始した。
 この紙パック牛乳による販路拡大が追い風となり、豊かな牧野の草資源を活用した粗飼料と全頭ジャージー牛であることをセールスポイントに、加工品の試作にも取り組んだ。
 昭和60年秋にはバター製造、年末には、ハム・ソーセージの商品化にも取り組み、翌年3月には大阪の大手デパートの物産展に出店するまでに至った。その後も引き続きナチュラルチーズの商品化に取り組んだ。
 昭和62年、加工施設と販売施設が、広域農業開発事業によって相次いで建設され、昭和63年10月に本格的な運営が始まった。
 そして、平成2年にはアイスクリームの販売も始まった。加工品生産体制がほぼ整備された平成4年頃から、福岡市内の百貨店や大手スーパーで物産展を実施し、ジャージー牛乳や乳製品のPRに努め、「販売なくして生産なし」という言葉を具現化してきた。
 現在、加工品では、チーズ、バター、アイスクリーム、ヨーグルト、ハム・ソーセージなど10アイテムを生産し、JAを通じた大手百貨店のお中元、お歳暮のカタログ販売や物産館「ぴらみっと」などの販売により、平成13年度の年間販売高は277,534千円となった。さらに牛乳の販売高701,591千円を加えると、合計で979,125千円となる。
 このように、牛乳・乳製品などの独自販路の開拓と商品開発により、地元において新たな雇用の創出など、地元への貢献も高い。


最近の牛乳等販売実績
 牛乳販売高乳製品販売高肉類販売高物産館販売高
平成10612,69046,38223,578178,938
平成11675,97848,23034,477163,642
平成12701,26663,86241,941157,820
平成13701,59174,60444,529158,401
最近の牛乳等販売高の推移


3)土地利用型酪農と循環型農業の推進

 阿蘇外輪の辺縁部に位置する小国郷地域には、豊富な草資源があり、ジャージー牛導入と軌を一つにして始まった草地開発事業により、農協は、草の利用性が高いジャージー牛の特性を活かした土地利用型酪農を指導・推進してきた。そのことが、文字通り他地域の牛乳とはひと味もふた味も違う評価の高い牛乳産地の素地を作り上げた。
 小国郷は、大根、ほうれん草などが小学校の教科書にも取り上げられた高原野菜の産地でもある。その栽培面積は、大根180ha、ほうれん草150ha、きゅうり23haと県内屈指であり、ジャージー酪農家で生産される堆肥生産量4,000tが、農地に還元される。


小国郷における堆肥の利用の実態調査

また一部の酪農家では、有機質肥料(約800t)を処理製造し、飼料畑・大根(ほうれん草)への循環体系を作り出し、地域複合の持続型農業を実現している。

有機質肥料の供給・利用状況


4)町の推進役

 小国郷の玄関口である旧国鉄宮原線は、過疎の中山間地に位置し利用客が少なく赤字路線であったことから、昭和59年に廃止となった。当時、国鉄の廃止による、地域経済の危機感は相当のものがあり、小国町では、町制50周年にあたる昭和60年に「悠木の里づくり」をスタートした。この運動は、「地域の特性である資源や伝統的な文化、歴史を最大限に活用し、住むことが誇りに思えるような町を、将来に向けて作っていこう」ということであり、当時、県が提唱した「日本一づくり運動」とも呼応したもので、地元産の木材を多用したアリーナ「小国ドーム」を建設し、地域資源を活用した加工品開発のシンボルとして町民の期待は大きかった。
 昭和50年代からは、全国的に牛乳の供給過剰基調にあり、新たな需要を創造していくため、昭和62年に本格的な乳製品加工施設を建設した。乳製品はジャージー牛乳を用いたバター、チーズ(エダム、チェダー)やアイスクリーム、肉類加工では、ジャージー牛肉等を活用したベーコン、ハム・ソーセージの加工に取り組み、「悠木の里づくり」で建設した物産館「ぴらみっと」での販売は県外からのお客様から大変好評を博している。
 この加工品生産の基本方針は、次の通りであった。
 @ 価格形成を自ら行える付加価値農業の推進。
 A これに伴う就業の場の提供。
 B 生産者育成も見据えた冬期の余剰乳対策。
 C 地域特色のある商品開発。
 おりから、消費者は本物志向を求める気運が高まり、タイムリーな時期にジャージー牛乳を原料にナチュラルチーズ、バター、ハム・ソーセージの加工施設を建設し、加工品販売体制を構築した。これらの活動は、小国町が提案した町づくり運動「悠木の里づくり」につながり、地場資源を活用した加工品の開発が、この運動の一つにもなり拠り所とされた。
 また、かつてジャージー牛の育成拠点であった三共牧場を活用し、小中学生の酪農体験の場として提供しており、消費者と生産地の交流を通じた次世代の牛乳応援団を育成するとともに、町が推進するグリーン・ツーリズムの「火種」となり、平成9年には全国でも珍しい、九州ツーリズム大学の設置につながった。

5)第6産業への挑戦

 現在、小国郷地域の経産牛1頭当たりの自給飼料作付面積は、県平均(29g)の約2倍に相当する56aの草地基盤を有しており、土地利用型酪農の礎が既にこの地域には存在する。草で作るジャージー牛乳は、他地域にはない「安全でおいしいプレミアム牛乳」として、消費者からの評価も高く、地の利を活かす自給飼料増産への取り組みは、今後も継続するものである。
 食品の安全性が注目され始めた平成12年に自給飼料多給を全面に打ち出し、福岡市を拠点とする生協との間で、遺伝子組み換え飼料を使用しないNON-GMO牛乳の契約生産を行い、生産部会と一緒になったテレビコマーシャルのスポット放映によって、需要拡大対策を行った。
 平成13年には、牛乳の季節需要に応えるため、夏場の需要に合わせた生産体制を推進し、冬期に発生する余剰乳対策としてヨーグルト工場を建設した。この工場で開発されたヨーグルトはドリンクタイプのものであり、チーズ、バター、アイスクリームに次ぐ新商品として期待されており、現在学校給食にも利用され、地産地消を実現している。
 また、この新商品については、平成14年度熊本県農産物加工食品コンクールにおいて最高賞の金賞を受賞し、その加工技術の高さについて早くも実証された。
 さらに、保存性の高い濃縮ミルクに着目し、冬期に発生する余乳を加工することも検討中である。
 このように、農協の活動の大きな成果は、地域の気候風土を熟知したうえで、稀少乳用種であるジャージー牛を活用した酪農とその周辺産業を定着させ、さらに発展させているところである。
 それは、単に生産だけでなく、生産→加工→販売→交流産業→消費者との連携によって、農業の多角化・複合化を推進し、新しい産業として発展させようとする「第6次産業」への取り組みとその展開への挑戦である。


(3)活動の実施体制

 ジャージー牛導入当時は、小国郷の酪農振興における活動の中心は、旧小国町農業協同組合、旧南小国町農業協同組合であったが、平成4年に両農協が合併し、阿蘇小国郷農業協同組合がその活動を引き継いできた。しかし、平成13年4月に阿蘇郡全地域12町村7つの農協の広域合併により、阿蘇農業協同組合が誕生した。その規模は組合員数12,742名、取扱高13,220,172千円と、熊本県内においてもトップクラスの総合農協となった。
 合併後の営農指導等の活動は、管内3ヵ所(中部・南部・小国郷)に設立された営農センターがその拠点となった。小国郷のジャージー酪農の振興についても、小国郷営農センターが行うこととし、その管内は旧阿蘇小国郷農協の管内となった。
 この小国郷営農センターには、畜産課と事業課が置かれ、生産と販売についての両方に支援を行っている。また、生産者による部会(酪農・繁殖牛・肥育牛)に対する支援も行っている。特にジャージー酪農家は酪農振興会を設け、全酪農家が一体となった取り組みを行っている。


阿蘇農業協同組合における活動体制


(4)活動の年次別推移

年 次活動の内容成果・問題点など
昭和30年阿蘇山麓集約酪農地域の指定 
昭和32年第1期ジャージー種導入
オーストラリアから98頭輸入
草地造成の実施
第1回から7回(昭和32〜36)までに、合計1,033頭導入
酪農家戸数99戸、乳牛頭数142頭
昭和33年集乳所竣工
牛乳処理場竣工
福岡方面に生乳出荷
処理能力1.6t/日
昭和34年福岡県八幡市に生乳直送開始
学校給食牛乳供給開始
草地改良への取り組み本格化
(高度集約牧野造成改良事業)
昭和33〜35年 6団地 64.5ha
乳価:37円/kg
昭和37年三共公共育成牧場完成
(大規模草地改良事業)
酪農家戸数489戸
乳牛頭数942頭
生産量1,221t
生産額45,177千円
昭和39年三共公共育成牧場天皇杯受賞第3回全国農業祭
昭和47年凍結精液による人工授精開始ジャージー種雄牛全頭廃用
酪農家戸数151戸
乳牛頭数918頭
生産量1,706t
生産額1,706t
生産額112,623千円 乳価:66円/kg
昭和52年田原地区酪農団地造成
三共公共育成牧場整備
(公共育成牧場整備事業)
4戸150頭飼養
昭和52〜54年
昭和53年牛乳パック詰め施設竣工
(地域農政特別対策事業)

杖立温泉、家庭配達システムの開始
充填本数:5,000本
熊本市、福岡市のスーパーへの販売を開始
昭和54年牛乳の乱売合戦 
昭和56年ジャージー牛×和牛
F1肥育もと牛として高値取引
乳価低落
乳価:130円/kg
昭和60年小国町で「悠木の里つくり」運動が始まる
農畜産物加工試作施設「手作りの館」完成
国鉄宮原線、廃止
農家主婦のバター、チーズ試作の取り組みが商品化への動気付けに
昭和61年第2期ジャージー種導入
ニュージーランドから150頭輸入
東京西友ストアにジャージー牛乳空輸
昭和61〜63年

大阪大手デパートで高い評価を得る
酪農家戸数52戸
乳牛頭数684頭
生産量2,077t
生産額275,580千円
昭和62年乳製品加工センター竣工
(広域農業開発事業)
黒豚ハム加工処理工場の建設
(山村振興対策事業)
ジャージー牛導入30周年記念行事実施
昭和63年小国町物産館「ぴらみっと」竣工
(山村振興対策事業)

レストラン部門の開始
 
平成元年牛群検定実施
ジャージー牛と黒牛の交雑種の肥育開始

三共公共育成牧場での小中学校生の宿泊研修受け入れ開始
検定農家数25戸 検定率50%
酪農家戸数48戸
乳牛頭数923頭
生産量2,246t
生産額305,283千円
平成2年堆肥つくりと有機野菜の栽培
第3期ジャージー種導入
アメリカから50頭輸入
ほうれん草、大根
泌乳能力の飛躍的改善
平均乳量6,000kg 乳価:145円/kg
平成4年市乳工場の建設(農業構造改善事業)
福岡大丸ジャージーフェア開催
 
平成5年明治乳業kkと生乳取引契約
福岡西鉄ストアーに小国コーナーオープン
牛群検定実施
 
平成6年小倉「そごう」小国物産展開催 
平成7年福岡市内で小国ジャージーヨーグルト販売開始酪農家戸数35戸
乳牛頭数1,005頭
生産量3,196t
生産額462,720千円
平成10年小国町農協と南小国町農協が合併し、阿蘇小国郷農協誕生 
平成11年大規模(100頭規模)酪農経営出現(公社営畜産基地建設事業)
堆肥活用による野菜面積の拡大
ほうれん草150ha、大根延べ750ha
平成13年阿蘇郡12町村7農協が広域合併し阿蘇農業協同組合が発足
乳製品ヨーグルト工場の建設
(公社営畜産基地建設事業)
 
平成14年ドリンクタイプヨーグルト販売開始酪農家戸数27戸
乳牛頭数1,233頭
生産量4,274t
生産額589,320千円 乳価:137円/kg



3.地域振興活動の波及効果の可能性


 平成13年9月、国内で初めて発生したBSEは、牛肉の偽装事件や農畜産物、加工食品の不正表示問題へと発展した。改めて食の安全・安心が問いかけ直される契機でもあった。
 今後、生産の効率性だけを追求した経営は、環境や安全性等の視点で是正を迫られることが容易に予想される。
 農協による取り組みは、今までに経済情勢の変化によるピンチを創意と実行によりチャンスに変え、少数精鋭の酪農家群を育成してきた。さらに、独自の流通に挑戦する姿勢は大量生産・大量消費至上主義に少し距離をおいた、小国郷ジャージー酪農の特徴である、言わば身の丈にあった活動を終始一貫して行ってきた。
 生産物の販売、副産物である有機質肥料を地域野菜農家との契約による供給、生産物の加工流通、家畜を中心にしたふれあいや生産体験等をフルに活用した農協の活動は、畜産、特に酪農の持つ“総合性”を発揮させたものである。自ら作り販売するといった同様の活動が「点」としては既に各地に芽生えているが、小国郷における農協の活動は、組織の力で、地域という「面」的な取り組みで成果をあげている。
 畜産という作目の特性から、このような活動は、組織力があれば比較的容易に取り組みが可能であると考えられるが、効果を得るためには、長期展望に立ち、継続することが重要であると考えられる。
 また、小国郷地域での成功の影には、農協と役場の相互理解、さらには優秀な酪農家の役割が、重要な要素として存在した。



4.今後の活動の方向・課題等


 生産物の安心・安全が見えることが産地確立の条件であり、第6次産業化は顔の見える畜産に直結するものである。この6次産業化の進捗を、さらに強固なものにするため、下記について検討している。
  1. 小国郷が、福岡県の生命線である筑後川水系上流に位置するという地理的要因から、さらに環境保全に配慮した循環型農業生産体制を整備することとしている。
  2. 豊かな牧野や大根畑での自給飼料生産の拡大を、さらに進めることにより、家畜排せつ物の有効利用と草でつくるジャージー牛乳の生産、さらには国土保全まで視野にいれた循環型農業を推進していく。
  3. 牛乳の需要は、夏期と冬期の較差は拡大傾向にある。夏期にも供給不足を生じさせない供給体制を構築することは、冬期に余剰乳の過剰が発生するリスクが大きく、チーズ、バター、ヨーグルトなど既成の乳製品加工に止まらない、新たな加工品開発を創意工夫を持って検討していく。
  4. 平成13年に阿蘇地域農協の広域合併が行われ、このことは農協組織強化につながっているが、ジャージー牛乳の生産が小国郷地域に限定されている状況において、広域合併農協の営農強化により、小国郷ジャージー牛乳のさらなる飛躍を模索していく。
 








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