平成16年度 地域畜産状況レポート

肉用牛ヘルパー活動の紹介(下野肉用牛ヘルパー組合)

【地域の概要】
 下野ヘルパー組合が活動する長陽村は、熊本県の東部、阿蘇五岳の西山麓にあり、熊本市から34kmに位置し、東は阿蘇郡白水村、西は菊池郡大津町、南は阿蘇郡久木野村、北は阿蘇町に接しており、総面積は38.76kuで阿蘇国立公園の一部を占め、阿蘇火山を背景にした自然豊かな山村であります。また、阿蘇南部を総称する南郷谷の入り口に当たり、交通は大分県に抜ける国道57号線、宮崎県へ向かう国道325号線、蒸気機関車アソボーイの豊肥本線、トロッコ列車が走る南阿蘇鉄道などがあります。自然環境としては白川水源(白水村)など湧水を集めた白川が、阿蘇谷を北から流れてくる黒川と立野火口瀬近くで合流し、白川となって、熊本平野を西流し有明海へ注いでおり、標高は海抜400m〜500mに位置し、年間平均気温14.1℃、降水量2,813mmの地帯です。
 村の人口は5,092人、世帯数1,568戸(平成15年11月現在)で農家戸数は401戸、うち肉用牛農家は89戸で、538頭が飼育されています。(表1及び表3)
 農業では肉用牛、水稲をはじめ施設園芸(トマト、イチゴ)などの土地利用型農業が中心となっており、8.57億円のうち畜産が1.88億円で農業全体の約20%を占めています。(表2)

放牧風景

表1 長陽村の人口及び農家構成                (単位:戸、人)
総人口 ※1総戸数 ※1農家戸数※2
専業農家兼業農家畜産農家
5,0921,5684016497
※1:平成15年11月現在 ※2:2000農林業センサス
表2 農業粗生産額                      (単位:百万円)
品目水稲野菜畜産工芸農産物その他合計
粗生産額4441801882520857


【地域の畜産の概要】
 阿蘇地域は「阿蘇くじゅう国立公園」に属しており、広大な草資源を保有しています。その草資源を最大限に利用して、古くは奈良時代から牛馬の放牧がされてきました。
 通常は5月〜11月まで放牧を行う「夏山冬里」の放牧が主流ですが、最近では1年中放牧を行う「周年放牧」も盛んに行われています。飼養されている品種は「褐毛和種」が大半を占めており、「阿蘇あか牛」という「安心、安全なヘルシーな牛肉」としてその地位を確立しています。
 しかしながら平成3年の牛肉輸入自由化を境に、畜産の低迷、畜産農家の高齢化や後継者不足をはじめとする担い手不足は深刻な問題となってきています。
 長陽村でも同様に飼養戸数が減少していますが、頭数は戸数の減少に比べるとさほどではありません。その理由としては中核的農家の規模拡大や後述する肉用牛ヘルパー組織をはじめ、その他の営農集団の組織化が進み、幅広い活動とめぐまれた「放牧地」という立地条件もあり、多頭飼育がさほど困難でなくなったからだと思われます。
 下野ヘルパー組合の活動地域である長陽村下野地区では、畜産農家8戸、繁殖雌牛100頭の規模で、前述したとおり放牧主体の肉用牛繁殖経営が営まれています。当地区では増頭意欲が高く、これからも飼養頭数の減少はあまり心配ないと考えられます。

表3 飼養戸数、飼養頭数の推移
  平成11年平成12年平成13年平成14年
阿蘇地域戸数1,688戸1,584戸1,498戸1,402戸
肉用牛頭数37,483頭36,021頭36,154頭37,750頭
長陽村戸数100戸97戸94戸89戸
肉用牛頭数573頭565頭550頭538頭


【ヘルパー組合の発足の背景】
 下野地区では水稲の生産調整が進み、転作田を中心とした牧草生産を行ってきました。当地域は長陽村の中でも多頭飼育農家が多く、畜産農家は無家畜農家の転作田を借りて牧草を生産したり、また稲わらと堆肥を交換するといった体制で粗飼料確保を行ってきました。その結果、下野地区約30戸の農家の転作田の約9割で粗飼料が生産され、牧草、稲わらと堆肥を交換するといった耕畜連携の農業が展開されるようになりました。
 その後畜産農家の規模拡大も進みましたが、ほとんどの農家が複合経営(稲作、施設園芸)のため作業時期が重複し、粗飼料確保が困難になってきました。
 もともと畜産農家同士の連帯意識が強かったため、農家間での粗飼料生産の作業受託などが行われるようになりました。しかし、それは個人間での受託だったので作業体系や料金の設定もまちまちであったり、受託側が他の農作業の状況次第なら受託できないなどの問題もありました。
 そこで増頭の意志が強かった畜産農家が集まり会合を行い、どうにかして粗飼料生産支援組織ができないかと話し合いが始まりました。
 まずヘルパー登録できる農家のリストアップを行い、若手の畜産農家や畜産農家の後継者など7名をヘルパーとして登録を行いました。利用料金や規約等の話し合いを行い、機械についてはロールベーラー等を導入した機械保有組合からのリースで行うことで確保することにしました。このように既存の関係組織等との連携協議を実施し、ヘルパー組合設立の運びとなりました。

ディスクモアーによる刈り取り・収穫作業

ジャイロレーキによる乾燥調整作業

ロールベーラによる梱包作業

ラッピングマシンによるラッピング作業

【肉用牛ヘルパー組合の概要】
  1. 組合員数及び、ヘルパー要員について
      現在、組合員数10名。ヘルパー要員については臨時要員7名が登録されており、事務局が組合員から出役依頼をうけ、依頼内容の確認、また、作業内容と要員の調整等を行いヘルパー要員に出役要請を行っています。
  2. ヘルパー作業について
    ヘルパー利用料金は表4の通りです。
    表4 利用料金表                    単位:円
    区 分利用料金備 考
    播種・鎮圧作業
    刈り取り・反転作業
    収穫・調整作業(運搬含む)
    26,00010a当たり
    ※利用料金についてはヘルパー要員のトラクター使用料、燃料費、粗飼料生産機械一式のリース料を含む料金となっています。
    .0.0
  3. 活動実績
     平成13年度に組合を設立し肉用牛ヘルパー等組織支援対策事業を取り組みました。平成13年度はヘルパー要員の育成や組織の育成などを十分に行い、本格的な活動を開始したのは平成14年度からであります。その後肉用牛ヘルパー組合活動は順調に展開されています。 平成14年度の活動実績は表5のとおりです。
表5 平成14年度実績
活動内容活動実績
1.推進協議会の開催4回開催(全体会2回、役員会2回)
2.ヘルパー組織活動の計画策定会議1回開催
3.組織運営啓発・普及事務運営会議2回開催
4.ヘルパー要請研修会の開催1回開催
5.先進地研修鹿児島県(7名参加)
6.出役調整管理業務29回
7.料金徴収管理業務14回
8.保険加入費ヘルパー要員7名保険加入
9.飼料増産のためのヘルパー利用面積3,964a

【今後の課題と方向】
 今後はこれまで以上に離農や農家の高齢化、担い手不足が進行することが予想されると同時に、ヘルパー活動の主体となる肉用専業多頭飼育農家での労力不足改善が課題となります。
 その対策として、肉用牛ヘルパー組合の活動がさらに重要視され、これまで以上にヘルパーの依頼が増加すると思われます。そうなっても対応できるように、ヘルパー要員の増加や若手の加入、育成が必要となってきます。また後継者にとって、魅力のある畜産経営を行うためにも、休日の確保が求められてきます。
 長陽村では肉用牛ヘルパーは2つの組合で活動しており、1つはこれまでに紹介した長陽村下野地区の畜産農家を対象とした飼料増産支援のみのヘルパー活動を実施する「下野肉用牛ヘルパー組合」です。もう1つの組合は長陽村の全域の畜産農家を対象に、家畜市場への輸送、削蹄などの支援を実施する「長陽村肉用牛ヘルパー組合」です。本組合員でも「長陽村肉用牛ヘルパー組合」を利用することが多くあります。
 これからはヘルパー組合の利用がさらに多くなることが考えられ、また下野地区以外の畜産農家からも村全域を網羅した粗飼料生産支援ヘルパーや飼養管理ヘルパーの実施などの要望も強くあり、村全体の畜産の活性化を考えた上で、村全域の活動を支援するヘルパー組織の育成などが求められてくると思われます。
 今後は、これまでの下野肉用牛ヘルパー組合の活動を十分に活かし、粗飼料生産のみならず村全体の広域的なヘルパー活動を実施する組織の育成が、村の畜産活性化のためにも重要になると思われます。

報告者:長陽村産業振興課 長野智宏氏



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