■■■ 球磨酪農組合育成牧場におけるリードカナリーグラス栽培の意義と環境保全型循環経営の有利性 ■■■


●はじめに
 球磨酪農育成牧場は、昭和42年に開場し、6ヶ月令〜10ヶ月令の乳用牛100頭を傘下農家より預託育成妊娠鑑定後返す事業に取り組みました。その後ホルスタイン種の肥育も手掛け昭和55年〜58年まで公社営事業により草地造成、育成牛舎、肥育牛舎、堆肥舎(ブロアー発酵装置)、タワーサイロ2基ボーリング飲雑用水、給水施設、道路整備、畜衛機等を整備しました。牧草地にはそれまでオーチャードグラス、Hワンライグラス、ケンタッキー31フェスク、ケントップ、ホワイトクロバーの5種混播でしたがタワーサイロを生かして長大作物デントコーンの栽培と裏作にイタリアンライグラスを取り入れました。元々粘土質礫混じりの土地で、毎年のプラウ耕起作業に加え、子供の頭程の石もあって除石砕土作業にも大変な苦労と経費も必要で、また傾斜地でもありハーベスタでの収穫やタワーサイロへの詰め込みも大変でした。アンローダーで取り出したサイレージはデンプン質が強く当然ながらホルスタイン育成牛の腹作りには向かず過肥になり、肥育牛前期の給与でも肉色の濃い物が多く、サイレージ調製技術や給与法の未熟さを大いに反省しました。

◇◆◇ 球磨酪農農業協同組合 ◇◆◇


●球磨酪農式リードカナリーグラス栽培法
 このような事からデントコーンに替わる牧草として教えてもらったのがリードカナリーグラスでした。まず作り易い事、永年牧草であり1回播種すると5年くらいは播きなおしの必要がなく乾きやすい草は、牛が腹いっぱい食べることができることで、私どもにはまさに救いの神様でした。平成になってからは育成牛110頭、HBF1肥育牛500頭の経営を続けており、ブロワーを使った発酵堆肥は耕種稲作農家から大変喜ばれ、毎年30000束の稲わらを堆肥と交換してその残りは育成牧場の33ヘクトアールの牧草地に施肥散布しております。作付けは播種予定地への堆肥散布から始まり10a当り5t〜8tを散布し、プラウで50p深耕、除石した後デエスクハローで均一にならしてから、ミネラル石灰100s、過燐酸石灰80sを散布して土とよく混ぜておきますが、ここまでの作業は8月末までに完了させておくことが大切です。
 いよいよ播種ですが9月20日頃が適期となっており、わずか10日遅れても発芽が少なく来春の株の残留が悪くなるそうで最大の注意が必要です。育成牧場ではベンチャー種を10a当り2sと化成肥料を40s〜60s散布し、ローラーで鎮圧し、更にその上から完熟堆肥を3p散布し、再度ローラーで縦横2回鎮圧しこれで完了です。こうしておくと傾斜地でも強い雨が降っても土や種子の流失もありません。



●球磨酪農式リードカナリーグラス管理法
 昨年9月20日に播種したリードカナリーグラスですが、初期育成が遅いために初年はどうしても雑草に負けてしまい、4月上旬頃には雑草ばかりが繁っていてかわいそうな様子です。そこでこの雑草をなるべく短く刈り取ってリードカナリーグラスの頭を出してやってください。ついでに化成肥料14−14−14位を10a当り20s追肥してください。今度はリードカナリーグラスが一斉に伸びてきて、ようやく1回目の刈り取りが6月中旬になります。2回目の刈り取りは7月下旬になると思いますが、その頃には雑草もほとんどなく立派な草地になっています。しかしリードカナリーグラスにも弱点があります。旱魃です。夏場の乾燥に弱いので2回目の刈り取りの後は必ず完熟堆肥を3p厚さに散布してローラーをかけておきますと、堆肥が雨を吸って保湿性、保水性が良くなり旱魃を防止してくれます。次は9月下旬に3回目の刈り取り、4回目は11月下旬となりここがポイントとなるイタリアングラスの追播です。来春の雑草を押さえ込むために冬の間イタリアングラスに頑張ってもらいます。刈り取り後10a当り2sの早生イタリアンと化成肥料40sを散布後、完熟堆肥を3p厚さに散布しておきます。ローラーで鎮圧するのを忘れないでください。イタリアンは初期育成が早いので、雑草より早く発芽して雑草を防いでくれます。来春は4月中旬にイタリアングラスの刈り取りから始まり、2回目の6月から7月・9月・11月と合計5回の刈り取りができますが、7月末の刈り取り後の堆肥散布と最終刈り取り後のイタリアンの追播だけは手抜きを許すことはできません。もし怠ると来春は雑草に占領されて痛手を負うことになります。

 


●おわりに
 リードカナリーグラスは非常に作りやすく、早朝刈り倒して1〜2回反転し、午後にはロールラップできる速乾型牧草で家畜の育成用粗飼料としてはもちろん、肥育牛前期12ヶ月令までは飽食給与の出来る牧乾草として球磨酪農育成牧場では現在も続けており、良い成績を収めております。環境整備が厳しく云われる昨今、家畜の糞尿処理問題も避けて通ることできません。
 堆肥の肥効と夏場の保湿・保水性、冬場の保湿性を十分活用した牧草地の管理の為、良質の堆肥を生産し自家草地に消費する循環型経営こそ、今後の畜産農家の進むべき道だと考えます。

熊本県畜産協会 窓口相談員 嶽本和国






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