食肉の上手な調理法/


■はじめに
■肉の調理上の基礎知識
 ├補助調理法

 ├本調理法
  ├焼く
  ├煮る
  ├揚げる
  ├炒める
  ├蒸す
■栄養効果を高める調理法
 ├調理法による栄養成分の変化

■肉料理に合う野菜の取り方
 ├1日に必要な野菜の量は

 ├主菜の付け合わせ野菜
 ├浸ものやサラダとしての野菜
■調味料・スパイス・ハーブの賢い使い方
 ├調味料

 ├スパイスとハーブ
■肉や骨を使っただし汁の作り方


 

 
食肉の上手な調理法
はじめに

食肉の調理見本 「食卓こそは、人がその初めから決して退屈しない唯一の場所である」とは、ガストロノミー(美食学)で有名なブリア・サブァラン(Brillant Savarin)が彼の著書「美味礼賛」に示した一節です。そして西洋の人々にとって、肉はいつの時代もその色合い、風味の良さ、栄養の高さ、どれをとっても申し分のない食卓の主役として考え続けられてきました。肉料理は長い伝統の中で育まれ発達しました。
 肉と言えば、まずその代表は牛肉です。日本人が牛肉を口にするようになったのは明治時代以降のことで、その歴史はたかだか百年位のものです。牛の飼育は古くから行われてはいましたが、それは食用としてではなく、もっぱら農耕用と輸送用でした。その後改良が加えられて日本独自の食用肉となりました。これらの中で、特に味の良さでは、神戸牛や松阪牛、近江牛などの和牛は定評があります。しかし、現在それらは飼育に経費がかかり過ぎて肉のコストが高くなり、一般的ではなくなりつつあります。日本では食用牛肉というと前述の和牛と考えられがちですが、昨今、生産の60%弱を占めているのは乳用去勢牛で、この方がコストが安く生産できるようです。次第に肉食も増えて国内生産だけでは賄えなくなり、オーストラリア、アメリカ、ニュージーランド、カナダなどからの輸入肉も増えているのが現状です。
 「大衆牛肉」としては、国産乳用種牛肉と輸入牛肉が一般に定着しつつあります。輸入肉は、和牛の霜降り肉に代表される日本人の舌に慣れ親しんできた味わいとは違うため、好まれない場合もありますが、日本の牛肉生産事情が著しく好転するとも考えられないので、そのおいしい調理法をマスターする方が賢明です。
 肉類は動物性たんぱく質の有力な供給源であると同時に、脂肪、無機質、ビタミン(主としてB複合体)の供給源として大切であり、また、家庭やレストランなどいつの場合も献立の主菜として欠かせない大切な素材です。






●肉の部位に適した調理法

 肉料理のほとんどは加熱調理です。肉は加熱すると65度位でたんぱく質が固まり始め、風味やうまみが生まれます。しかし、これ以上加熱すると、肉は縮んで硬くなり、肉汁が流れ出て、うまみが失われ、重量も減ってしまいます。焼く、煮る、炒める、揚げる、蒸すなど調理法も色々で、その出来上がりに期待するおいしさも違います。
 牛肉の場合、手っ取り早くオイシク味わうには、高温で短時間に調理するのがいちばんです。ステーキの例のように軟らかい肉を使用するに限ります。一方、硬い肉でも、水を加えて長時間煮込むとポトフのように硬い組織が溶け始め、ゼラチン化して軟らかくなります。軟らかい肉だとかえって長く煮るとうまみや肉汁が流れ出て硬くなりバサバサでまずくなります。また、硬い肉はひき肉にすればハンバーグステーキのように硬い組織が砕かれて、軟らかい肉と同様に扱うことが出来ます。
 豚肉は牛肉と違い、全体的に軟らかく均一な肉質で脂肪も多く含まれています。おもてなし用など、料理の出来映えを良くしたい場合は、形良く仕上がるロース肉を使いたくなりますが、日常の総菜ではどの部位の肉を使っても硬くて困るといったことはありません。とはいうものの、部位によっては多少筋や脂肪が多いこともありますから、部位による肉の特徴と見分け方、調理の仕方を知っておくことは大切です。
 肉料理は、その作ろうとする好みの料理に適した肉を選ぶことが大切です。肉自体を味わいたいときは「焼く」「揚げる」「蒸す」など。また、副材料と一緒の味を楽しむには「炒める」、味付けで変化を付けたいときは「煮る」などの調理法を選ぶと良いでしょう。
 調理中に起きる加熱変化による肉の状態をしっかりと見て、できあがりのおいしさと結びつけるコツを捕らえるようにしましょう。必ずしも値段の高い肉がおいしい料理になるとは限りません。肉の部位と、それに適した調理法を選ぶことが料理上手になる第一歩と考えましょう。そして、信用のできる食肉小売店で品質の良いものを求めるように心がけましょう。





[表1 牛肉の部位と調理]


[表2 豚肉の部位と調理]