食肉の栄養知識/
調理法による栄養価の変化


■はじめに
 ├古代人は何を食べていた

■仏教の肉食禁止
■わが国の近世から現代の
 肉食と健康

■国際的な日本の位置
■栄養素摂取の日米比較
■ライフステージ別栄養
■長寿地域の食パターン
■食肉に含まれる栄養素の
 特性とその働き
 ├食肉の種類と栄養成分

■調理法による栄養価の変化
 ├肉類を調理する理由

 ├加熱による食肉の変化
 ├食肉の調理による変化
 ├和牛と輸入牛肉の違い
■食肉とたんぱく質
 ├なぜたんぱく質を食べ
  なければならないか

 ├動物性たんぱく質が
  優れているわけ

 ├日本人と動物性たんぱく質
 ├「トピックス」
   食肉のたんぱく質

■食肉とコレステロール
 ├コレステロールとは?
   -体内における役割-

 ├体の中で作られる
  コレステロール
 ├コレステロールの体内移動

 ├コレステロールと
  脂肪酸の関係

 ├コレステロールと健康・疾病


 
 食肉の調理による変化  


1.調理による栄養成分変化・脂質と成分の変化

●調理による栄養成分変化
 この分析データは生肉100gを加熱した場合、その加熱後の肉中の栄養成分を示した点が、実用的と評価される点です。普通、生肉100gを加熱すると、肉汁(脂肪も含む)が溶出しますので、加熱後の重量は70〜80%に減少します。それ(加熱肉)を試料として栄養成分を定量すると、加熱肉100g当たりの含有量になりますから、生肉としては(100g+α)gの肉を摂取した数値になります。表12には牛肉のエネルギーと主要な栄養素の分析結果を示しました。各部位の生肉100g当たりのエネルギー、たんぱく質、脂質、コレステロール含有量を100%として、生肉100gを加熱した後の肉に含まれる成分量を割合(%)で示しました。



●脂質と成分の変化

 乾式加熱法の放射熱を熱媒体とする網焼きで比較しますと、薄切りの方が厚切りよりエネルギー、脂質、コレステロール、ヒレ、ばら肉で明瞭で、もも肉は厚切りの方が薄切りより高いという逆の結果でした。この理由は、高温加熱による肉汁の溶出が著しいものと思われます。牛脂を用いるフライパン焼きでは、前の結果とは逆で、厚切りの方が薄切りより減少割合が高くなりました。厚切りの方が、過熱時間が長くなるため、肉汁などの溶出が大きくなるためと思われます。
 大量の油の中で加熱する揚げものの場合、片栗粉を付けて揚げるから揚げ、水溶き小麦粉を付けて揚げる衣揚げを比較しますと、本来は肉の形態が同じならば、衣揚げの方が肉の保水性が保持されるはずです。ところが、唐揚げの肉が角切りのため、薄切りの衣揚げの方が油と接する表面積が大きくなります。また、脱水や脂肪が溶け出すため、そこに揚げ油が入り込み、水と油の交代(脂肪酸組成の変化を伴う)が起こります。水分が減少した分、脂質が増加し、その結果エネルギーと脂質の摂取量が増すことになります。
 湿式加熱のゆでる(薄切り)は数秒加熱、ゆでる(ブロック)は十数分加熱、煮込み(角切り)は90分加熱と肉の形態と過熱時間の差異を含む比較になります。脂質の減少がいずれの部位でも著しく、特に90分も煮込むと組織がほぐれやすくなり、膨潤した組織に水分を抱え込むため、重量の増加が顕著です。