■はじめに
├古代人は何を食べていた
■仏教の肉食禁止
■わが国の近世から現代の
肉食と健康
■国際的な日本の位置
■栄養素摂取の日米比較
■ライフステージ別栄養
■長寿地域の食パターン
■食肉に含まれる栄養素の
特性とその働き
├食肉の種類と栄養成分
■調理法による栄養価の変化
├肉類を調理する理由
├加熱による食肉の変化
├食肉の調理による変化
├和牛と輸入牛肉の違い
■食肉とたんぱく質
├なぜたんぱく質を食べ
なければならないか
├動物性たんぱく質が
優れているわけ
├日本人と動物性たんぱく質
├「トピックス」
食肉のたんぱく質
■食肉とコレステロール
├コレステロールとは?
-体内における役割-
├体の中で作られる
コレステロール
├コレステロールの体内移動
├コレステロールと
脂肪酸の関係
├コレステロールと健康・疾病

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■加熱による食肉の変化 |
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肉類は生食することが少なく、焼く、煮るなどの加熱調理を行って食べています。加熱によって、香り、色、テクスチャー、味などが変化し、おいしくなります。また、食中毒の原因となる細菌が死滅し、安全になると同時に保存性も幾分増します。

●硬さ
牛肉は柔軟で弾力性のある塊ですが、加熱すると弾力性を増し、硬くなります。特に短時間加熱の調理法を採用した場合、結合組織の多い肉ほど硬くなります。食肉(筋組織)を構成する筋原線維は熱によりそのたんぱく質が変性し、線維状に収縮・凝固します。その間を満たしている筋形質たんぱく質も豆腐状に凝固します。また、結合組織中の肉基質たんぱく質も収縮するため、硬さが増します。しかし、肉を更に長時間湿式加熱しますと、結合組織が弱くなり、筋組織はもろく、ほぐれやすくなります。
すなわち、結合組織を形成しているコラーゲンが分解してゼラチン化するのです。この変化を旨く利用したのが、すね肉やばら肉の煮込み料理です。
●肉汁の浸出
生肉は保水性が高く、かなり強く押しても水分は浸出しませんが、肉を加熱すると肉汁がしみ出てきます。その理由は、熱により筋原線維たんぱく質が変性し、たんぱく質分子間で結合し、保持していた水分を分離することによります。更に、肉基質たんぱく質が変性し、結合組織が収縮するので、そのとき水分と共存するうまみ成分、エキス分、脂肪も溶出します。それらを肉汁と称しています。
その結果として、生肉に比べ、重量や容積が増減し、栄養成分も増減が見られます。肉汁の浸出が多い調理法では、肉が硬く、ぱさつき、形態も収縮します。これをなるべく防ぐため、実際の調理では酸味料、アルカリ類(重曹など)、食塩の添加などが提案されています。
●うまみの増加
肉は、加熱されるとうまみが増します。肉の保水性が低下すると、生肉では細胞内にあった水溶性成分が細胞外へ浸出するからです。
溶出した水溶性成分については、前述の通りです。油脂も溶出されるので、肉汁はうまみが強く、コクがあります。
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