食肉の栄養知識/
調理法による栄養価の変化


■はじめに
 ├古代人は何を食べていた

■仏教の肉食禁止
■わが国の近世から現代の
 肉食と健康

■国際的な日本の位置
■栄養素摂取の日米比較
■ライフステージ別栄養
■長寿地域の食パターン
■食肉に含まれる栄養素の
 特性とその働き
 ├食肉の種類と栄養成分

■調理法による栄養価の変化
 ├肉類を調理する理由

 ├加熱による食肉の変化
 ├食肉の調理による変化
 ├和牛と輸入牛肉の違い
■食肉とたんぱく質
 ├なぜたんぱく質を食べ
  なければならないか

 ├動物性たんぱく質が
  優れているわけ

 ├日本人と動物性たんぱく質
 ├「トピックス」
   食肉のたんぱく質

■食肉とコレステロール
 ├コレステロールとは?
   -体内における役割-

 ├体の中で作られる
  コレステロール
 ├コレステロールの体内移動

 ├コレステロールと
  脂肪酸の関係

 ├コレステロールと健康・疾病


 
 和牛と輸入肉の違い  

 現在、わが国で食用にされる牛は、和牛、乳用肥育牛、乳用雌牛および輸入牛です。
 和牛は、農耕用在来牛に明治以降、外来種を交配して改良が続けれらた日本特有の牛です。和牛の90%を黒毛和種が占め、残りの10%を褐色和種、日本短角種、無角和種が占めています。和牛の肉質はきめが細かくて軟らかく、赤身の間に細かい脂肪が入った霜降り状の肉になりやすいようです。これは、脂肪交雑の入りやすい遺伝的素質の牛に、与えた飼料の栄養分を体組織に十分蓄積させるように肥育するためです。これは、世界の肉用種には見られないことで、味覚的にも視覚的にも、日本人の嗜好にあった肉として発展し、現在に至っています。脂肪の交雑は和牛の遺伝的特質で、ヘレフォード種やホルスタイン種などの西洋種を肥育しても、霜降り肉は得られません。
 乳用牛は和牛に比べ発育が早いのですが、その肉質は霜降りになりにくく、きめが粗く、肉色は薄く、変色しやすくなります。脂肪は和牛より融点が高く、また、乳廃牛の肉は硬く肉色が濃く、脂肪が少なくなっています。乳用去勢牛の肉は、和牛と輸入牛肉の中間的なものが多く、単に国産牛と表示されているのは、おおむね乳用牛と思われます。

 牛肉の消費量は、豚肉や鶏肉の消費傾向に比べかなり伸びています。料理や嗜好の多様化、健康志向から、脂肪の少ない赤身の輸入牛肉にも関心が寄せられています。牛肉は、と畜後7日以上経過すると肉質が軟らかくなり、うまみや香りが良くなり食べ頃となります。枝肉を0〜5度で保存した場合、熟成期間は通常1〜2週間程度です。現在、流通している輸入牛肉はチルドビーフ、フローズンビーフ、エイジドビーフなどがあります。チルドビーフは枝肉から分割し、除骨した部分肉を凍結ぎりぎりの温度(マイナス1〜マイナス2度)で保存すると、熟成速度が遅くなり、約1ヶ月は肉質を保持します。最近は、この形態の輸入肉が増えていると報告されています。フローズンビーフは死後硬直を経過させた部分肉を熟成が始まる前に凍結冷凍し、長期保存可とした肉です。マイナス20度保存で約1年、マイナス60度で約2〜3年が保存可能とされています。この肉の調理では、解凍後数日の熟成が必要です。エイジドビーフは熟成させて凍結したものですので、解凍したらすぐ調理に利用できます。冷凍肉の解凍は、ドリップを少なくするために冷蔵庫内で緩慢解凍が適しています。

 和牛の肉の特徴は、きめが細かく、肉質が軟らかいことです。脂肪は少しクリーム色で、脂肪含量が高く、霜降り状に分散しています。脂肪の融点は、輸入牛肉のものよりは低いです。一方、輸入牛肉はきめが粗く、肉質は硬く、脂肪は白くて硬く、赤身肉で、脂肪交雑は少ないです。表17にそれらの部位別脂肪含量と脂肪酸組成を示します。この表から、牛肉にはオレイン酸の含量が多い傾向も見られます。オレイン酸は、オリーブ油にも多い一価不飽和脂肪酸です。最近、多価不飽和脂肪酸のリノール酸などとは異なり、善玉のHDLコレステロールを下げずに悪玉のLDLコレステロールだけを下げることが明らかになり、注目を集めています。

 全体の消費動向としては高級肉・霜降り肉志向と赤身肉・低価格肉志向の二極分化傾向が見られます。肉の種類・部位・肉質の表示および適切な調理法の情報や知識がますます必要とされることでしょう。