食肉の栄養知識/



■はじめに
 ├古代人は何を食べていた

■仏教の肉食禁止
■わが国の近世から現代の
 肉食と健康

■国際的な日本の位置
■栄養素摂取の日米比較
■ライフステージ別栄養
■長寿地域の食パターン
■食肉に含まれる栄養素の
 特性とその働き
 ├食肉の種類と栄養成分

■調理法による栄養価の変化
 ├肉類を調理する理由

 ├加熱による食肉の変化
 ├食肉の調理による変化
 ├和牛と輸入牛肉の違い
■食肉とたんぱく質
 ├なぜたんぱく質を食べ
  なければならないか

 ├動物性たんぱく質が
  優れているわけ

 ├日本人と動物性たんぱく質
 ├「トピックス」
   食肉のたんぱく質

■食肉とコレステロール
 ├コレステロールとは?
   -体内における役割-

 ├体の中で作られる
  コレステロール
 ├コレステロールの体内移動

 ├コレステロールと
  脂肪酸の関係

 ├コレステロールと健康・疾病


 
 わが国の近世から現代の肉食と健康 -1-  

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 肉食を禁止するわが国の食文化は、近世になっても本質的には変わらず、わが国の平均寿命の延びを大きく抑制しています。
 今世紀の初め、欧米諸国の平均寿命は軒並み50歳を大きく上回りました。しかし、わが国では厳密な計算で30歳代を低迷していました。わが国の平均寿命が男女とも50歳を超えたのは、昭和22年のことです。欧米より50年遅れたのは、歴史的な食生活の貧しさに起因しています。
 表1に、大正7年の生活程度中位の家庭の献立を示しました。一家4人の一週間分の献立です。軍隊などの特殊な集団では、これよりかなり良いのですが「この表1は一般国民の姿を表しています。動物性食品は週5日間出される塩引き30匁(もんめ)(1匁=3.75g)しかなく、平均1人当たり20g位、油脂もほとんどありません。総エネルギーは2100kcal位摂っています。たんばく質も平均1人当たり53g位ありますが、ほとんど米と大豆の植物性なのです。 平均寿命も短く、世界の60数番目であったとする学者もいます。

表1 大正時代の食生活の一例

静岡県周知郡宇刈(大正7年)
第五例 家族人員4人 15歳以上 2人
15歳以下 2人
(生活程度中)

十月三十日 米五合、味噌四十匁、大根潰二十匁、ナス漬二十匁 米五合、味噌三十匁、二十匁 米丘合、味噌三十匁、大根漬三十匁
十一月一日 米五合、味噌四十匁、大根漬二十匁、 米五合、味噌二十匁、潰二十匁、 米五合、味噌三十匁、大根漬二十匁、ナス潰二十匁
十一月二日 米五合、味噌四十匁、魚二十匁、大根三十匁 米五合、味噌三十匁、三十匁 米五合、味噌四十匁、大根二
十匁、ナス二十匁
十一月三日 米六合、味噌三十匁、大根三十匁、芋三十匁 米四合、味噌三十匁、三十匁 米五合、味噌四十匁、ナス二
十匁、大根三十匁
十一月四日 米五合、味噌四十匁、大根三十匁、ナス三十匁 米五各、味噌四十匁、三十匁 米五合、味噌三十匁、大根二
十匁、ナス三十匁
十一月五日 米五合、味噌四十匁、芋三十匁 米四合、■引三十匁、二十匁 米六合、味噌四十匁、大根二
十匁
十一月六日 米五合、味噌四十匁、大根潰三十匁 米五合、味噌三十匁、潰二十匁 米五合、味噌四十匁、ナス漬
三十匁

(農村保健衛生実地調査より)

注1:一合は180ml 注2:一匁は3.75g
出典:豊川裕之:食生活の変遷と将来一高齢化社会の栄養問題を考える一
(日本栄養士会編、高齢化時代の健康を考える、ヤクルト、1982)


 表2に示すように、この頃のわが国の死因第1位は肺炎および気管支炎、4位までを感染症が占めています。典型的な発展途上国型です。昭和26年、国民死亡率の第1位の座を結核が脳卒中に明け渡すまで、感染症時代が続きました。寿命の延びようがないわけです。
 ともあれ、図3に示すように、動物性たんばく質は少しずつは増え、その分植物性たんばく質が減少し、最近になって丁度1対1の割合になりました。
 たんばく質や脂肪の動物性と植物性の比が1対1である国は、わが国しかありません。長寿の世界一と密接に関連しているでしょう。

図3 動植物たんぱく質消費(摂取)の年次推移
出展:柄澤昭秀編:NHK市民大学、老年期テキスト、1987


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