食肉の栄養知識/



■はじめに
 ├古代人は何を食べていた

■仏教の肉食禁止
■わが国の近世から現代の
 肉食と健康

■国際的な日本の位置
■栄養素摂取の日米比較
■ライフステージ別栄養
■長寿地域の食パターン
■食肉に含まれる栄養素の
 特性とその働き
 ├食肉の種類と栄養成分

■調理法による栄養価の変化
 ├肉類を調理する理由

 ├加熱による食肉の変化
 ├食肉の調理による変化
 ├和牛と輸入牛肉の違い
■食肉とたんぱく質
 ├なぜたんぱく質を食べ
  なければならないか

 ├動物性たんぱく質が
  優れているわけ

 ├日本人と動物性たんぱく質
 ├「トピックス」
   食肉のたんぱく質

■食肉とコレステロール
 ├コレステロールとは?
   -体内における役割-

 ├体の中で作られる
  コレステロール
 ├コレステロールの体内移動

 ├コレステロールと
  脂肪酸の関係

 ├コレステロールと健康・疾病


 
 ライフステージ別栄養 -1-  

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 わが国の一部には、年齢つまりライフステージにより、栄養の摂り方を大きく変えた方が良いというコンセプトがあります。確かに、成長期には、成長にも栄養素を取られ、また活動も活発なので、その点を考慮する必要があります。また、高齢期に基礎代謝が多少減って、動きも少なくなった場合は、総熱量の摂り方を減らし気味にするなどの考慮は必要です。
 しかし、必要な栄養素のバランスはライフステージにより大きく変わるものではありません。大きく変えるべきとする考え、例えば「若いときは生臭いものも良いが、年を取ったら菜っ葉と豆腐とごまを食べていれば良い」とか「年を取ったら、魚は良いけれど肉はダメ」といった誤りにはその原因があります。その1つは、ライフステージによる栄養素摂取の違いが、生まれた年代の差(出生コホート差と呼ぶ)によるのに、それを加齢変化と錯覚することです。
図12 日本人の性・年齢階級別の肉料理、油料理を食べる者の頻度(厚生省:国民栄養の現状、昭和57年版(1982)

出典:柴田博、藤田美明、五島孜郎編著:高齢者の食生活

 図12に国民栄養調査のデータを示しました。これは、ライフステージ別の油料理や肉料理を頻回に食べる比率を示したものです。高齢者ほど高頻度の摂取の比率が低くなります。これは同一人を追跡調査したものではなく年齢群間の比較にすぎません。それにもかかわらず、これを変化、つまり「若いときに肉を食べでいたけれど、年を取って食べなくなった」と錯覚している人が多いのです。そして、それが養生法として理にかなっていると思い込んでしまっています。
 実は、現在の高齢者が若い人より肉を食べないのは、元々食べなかった習慣を引きずっているからにすぎないのです。決して「昔は食べたけれど、年を取って食べなくなった」ではないのです。むしろ逆に、今の80歳の人は50年前の30歳のときよりも肉をたくさん食べているはずです。食料需給表からも国民栄養調査からも、その推定は妥当と考えられます。
 同一集団の食事内容を50年間も追跡調査した研究は世界中に存在しません。しかし、筆者たちは、ある地域に住む70歳の方々の肉料理を摂取する頻度を追跡調査した経緯があります。それを示したのが図13であり、図8と同じ高頻度の基準を用いています。加齢に伴い高頻度に摂取する比率は、それほど減るわけではなく、女性ではむしろ増える傾向を示しました。これは1つには、肉や牛乳を少なくしか摂らない群は早く亡くなって、この対象に含まれないことにもよります。
図13 追跡調査による70歳・75歳・80歳時の食品摂取状況
(須山靖男:小金井市70歳老人の総合健康調査-第2報-東京都老人総合研究所編,63(1988))

出典:図12に同じ

 表6に日本人の栄養所要量の一部を示しました。所要量は最低必要量に安全率をかけたものです。ライフステージにより数値は若干異なっています。例えば、脂肪エネルギー比率は1〜19歳までは25〜30%ですが、20歳以後では20〜25%に低下しています。しかし、20歳以後はいずれの年齢群でも所要量が変わらないことに注意を払う必要があります。
 この所要量の解釈も間違っている人が少なくありません。例えば、1日のエネルギーは20〜29歳の男では2550kcal、70〜74歳では1人50kcalとなっています。これを同じ人が、20歳代から70歳代にかけて700kcal減らすべきと解釈している人が少なからず存在します。しかし、この所要量はそんなことを意味していないのです。20〜29歳のエネルギーは身長171.1cmの人をモデルとしています。一方、70〜74歳のエネルギーは、159.7cmの人をモデルとしているのです。171.1cmの20歳の男性が70歳になったときに減らして良いエネルギーは、ほんのわずかなものなのです。

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