■はじめに
├古代人は何を食べていた
■仏教の肉食禁止
■わが国の近世から現代の
肉食と健康
■国際的な日本の位置
■栄養素摂取の日米比較
■ライフステージ別栄養
■長寿地域の食パターン
■食肉に含まれる栄養素の
特性とその働き
├食肉の種類と栄養成分
■調理法による栄養価の変化
├肉類を調理する理由
├加熱による食肉の変化
├食肉の調理による変化
├和牛と輸入牛肉の違い
■食肉とたんぱく質
├なぜたんぱく質を食べ
なければならないか
├動物性たんぱく質が
優れているわけ
├日本人と動物性たんぱく質
├「トピックス」
食肉のたんぱく質
■食肉とコレステロール
├コレステロールとは?
-体内における役割-
├体の中で作られる
コレステロール
├コレステロールの体内移動
├コレステロールと
脂肪酸の関係
├コレステロールと健康・疾病
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■国際的な日本の位置 |
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日本の状態を正しく知るためには国際的な比較が大切です。現在の日本の状態を一口に欧米化したなどと言うのは非科学的であり、また有害です。
図6に示すように、総たんばく質に占める動物性たんばく質の割合がわが国のみ半分位で、ほかの国々は違っています。すなわち、欧米諸国は60〜70%を動物性が占め、アジアの国々では、動物性はかなり低くなっています。韓国では近年動物性が30%を超えましたが、それでもわが国の昭和30年代中頃のレベルにすぎません。中国も韓国も、わが固より食肉の食文化は豊かですが、国民の平均的摂取は経済の影響を受けるのです。
図7・図8に示したように、動物性たんばく質の総たんばく質に占める割合は、世界の国々で見ると平均寿命と相関しています。しかし、50%を少し超えている日本の平均寿命が60〜70%の欧米諸国より長いので、この比率も高ければ高いほど良いとも言えないようです。
図9は、各国の1人1日当たりの脂肪消費量と平均寿命の関連を示しています。脂肪の消費量が1日125gのレベルまでは両者に正の相関があります。つまり、脂肪の消費量が多いほど、寿命は長くなります。しかし、それ以上脂肪が増えると寿命は低くなってきます。
通常、脂肪の消費量と心筋梗塞との関連を見るデータが多いので、脂肪が多いことは悪いことのような印象になります。しかし、様々な病気を総合した死亡率が低くなると寿命は高くなるのです。一定の脂肪の消費量は、寿命の伸長に決定的に重要であることを示しています。
ちなみに、日本のこの時点の脂肪摂取量が60g弱です。したがって消費量(すなわち供給量)は70g位になります。日本という図の表示は元々はなく、私が推定して示したものです。
日本はラインから少し外れています。つまり、世界の国々の関連で見ると、脂肪の消費は少ないのに、寿命の長い少し毛色の変わった国ということになります。
以上のように、動物性たんばく質や脂肪を十分摂ることは、寿命を延ばすことに重要であることがわかります。大多数の寿命の長い国の動物性たんばく質の源は食肉なのです。ですから、食肉を十分摂ることは長生きにつながるわけです。もちろん、日本のように、魚も肉も同じ位食べることは理想ではあります。しかし、それは肉の価値をいささかも否定する根拠にはなりません。世界の長寿国は肉を主食にしているのですから。
表4は、世界の国々の各食品の消費量を示しています。日本の肉や乳・乳製品の消費量は欧米諸国に比較し、かなり少ないことがわかります。魚介類は世界一の高さを誇っていますが、肉、魚介類、牛乳・乳製品を足した量で見ると、欧米の方がわが国をかなり上回っています。
欧米諸国、特にアメリカなどでは、食肉の消費は理想より過剰である可能性もあります。逆に、その3分の1も肉を食べていない日本では、かなり不足の人もいることになるわけです。 |
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図6 世界各国の動物性たんぱく質比率

出典:木村修一:柄澤昭秀編 NHK市民大学、老年期テキスト,1987
図7 動物性たんぱく質/
総たんぱく質と平均寿命(女)
出典:木村修一編:長寿食辞典、サイエンスフォーラム,1995
図8 動物性たんぱく質/
総たんぱく質と平均寿命(女)

出典:木村修一:長寿会辞典、サイエンスフォーラム、1995
図9 世界各国の脂肪消費量と寿命
出典:柴田博:長寿と健康への挑戦、日本経済新聞社,1989 |
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