食肉の栄養知識/食肉とたんぱく質



■はじめに
 ├古代人は何を食べていた

■仏教の肉食禁止
■わが国の近世から現代の
 肉食と健康

■国際的な日本の位置
■栄養素摂取の日米比較
■ライフステージ別栄養
■長寿地域の食パターン
■食肉に含まれる栄養素の
 特性とその働き
 ├食肉の種類と栄養成分

■調理法による栄養価の変化
 ├肉類を調理する理由

 ├加熱による食肉の変化
 ├食肉の調理による変化
 ├和牛と輸入牛肉の違い
■食肉とたんぱく質
 ├なぜたんぱく質を食べ
  なければならないか

 ├動物性たんぱく質が
  優れているわけ

 ├日本人と動物性たんぱく質
 ├「トピックス」
   食肉のたんぱく質

■食肉とコレステロール
 ├コレステロールとは?
   -体内における役割-

 ├体の中で作られる
  コレステロール
 ├コレステロールの体内移動

 ├コレステロールと
  脂肪酸の関係

 ├コレステロールと健康・疾病






 
 日本人と動物性たんぱく質  
動物性たんぱく質の摂取量の増加と平均寿命の延びは相関関係にある
体位の向上にも動物性たんぱく質が関係日本人の平均寿命を延ばした結核・脳卒中の激減
動物性たんぱく質と脳卒中


日本人の平均寿命を延ばした結核・脳卒中の激減

─結核はなぜ減ったのか─
 戦後の復興が始まった昭和20年代の特に前半は食糧事情が大変に悪く、多くの人々が栄養失調の状態でした。そして、感染症が蔓延し、当時の死亡原因の第1位は結核、次が肺炎・気管支炎、続いて胃腸炎と死因の上位をすべて感染症が占めていました。
 その中でも、結核が最も恐れられていました。結核は7世紀頃からわが国にあったと推定されています。結核による死亡者が急増したのは、繊維産業が盛んになった1800年末の頃で、その後戦争の影響もあって結核にかかる人が増えていったといいます。昭和20年の敗戦の年は過去最高の死亡率(人口10万人に対して280.3人)を示しました。その結核も、この年をピークに減少していきました。それは、健康診断の実施、予防接種(BCG)の法的義務づけ、ストレプトマイシンなどの治療薬の普及が功を奏しました。それと併せて、食生活の改善による栄養状態の向上と衛生環境の改善も大きくかかわっているものと考えられます。
 低栄養の状態では、結核の病状を著しく悪化させることが動物実験でも確認されています。また、栄養状態が平均的に良好であるとは言えない開発途上の国では、結核による死亡率が高いことからも、栄養と結核は深い関係があることを推定させます。
 昭和25年(1950年)まで日本人の死因の第1位であった結核は、その後減少し続け、昭和50年(1975年)に10位以下になり、今日に至っています。
 結核と共に高い死亡率を示し、日本人の平均寿命の延びにブレーキをかけてきたのが、脳卒中などの脳血管疾患です。この病気による死亡者数は、結核による死亡率が急激に減少し始めた昭和26年以降も増加傾向を続けましたが、昭和45年をピークにその後は急速に減少しました。これも、穀物中心の食塩摂取量の多い食生活から、動物性たんぱく質をきちんと一定量を摂る食生活に変わってきたことと無関係ではありません。