食肉の栄養知識/食肉に含まれる栄養素の特性とその働き



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■食肉に含まれる栄養素の
 特性とその働き
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 ├加熱による食肉の変化
 ├食肉の調理による変化
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  優れているわけ

 ├日本人と動物性たんぱく質
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 ├コレステロールとは?
   -体内における役割-

 ├体の中で作られる
  コレステロール
 ├コレステロールの体内移動

 ├コレステロールと
  脂肪酸の関係

 ├コレステロールと健康・疾病


 
 食肉の種類と栄養成分   食肉の成分(1.栄養成分とその特性)


脂 質

 脂質は、食肉成分中で含量の変動幅が大きく、肉の種類、部位、年齢によって異なります。動物体内では、皮下、腎周囲、筋肉間などの脂肪組織に存在する「蓄積脂肪」と筋肉・臓器内にある「組織脂肪」に分類されます。「霜降り」と呼ばれる肉は、筋肉内で脂質が霜のような白い斑点状に、細かく多量に分散した状態の肉を指します。その含まれ方は、肥育方法や肥育程度によって変動します。脂質は食肉のおいしさや肉質の軟らかさに関連すると同時に、高エネルギー源として、また、健康と深く関わる成分として注目されています。
 食肉100g中の脂質含有量を表4に示したように、牛肉のかたロース、ロース、サーロイン、ヒレでは、和牛の脂質含有量が輸入牛よりかなり高い傾向を示しています。ばらでは、逆に輸入牛の方が顕著に高く、ももでは両者の差は見られません。豚肉のロースでは、大型種の方が中型種より脂質含有量が高く、成鶏の手羽・胸肉では若鶏より高いです。食肉に含まれる脂質の融点は、表5に示したように、それを構成する脂肪酸の種類と含有割合によって異なります。概して牛肉や羊肉に含まれる脂肪は融点が高いので、加熱して熱々を賞味する料理に適します(すき焼き、しゃぶしゃぶ、ジンギスカン鍋など)。豚肉や鶏肉の脂質は融点が低く、人間の体温に近いので、冷前菜や冷たくても食べやすいハムなどの加工品の製造に利用されます。
表4 食肉100g中の脂質含有量(可食部100g中)
 

牛 肉

豚 肉

鶏 肉
 
和牛

乳用肥育雄牛

輸入牛

大型種

中型種

大型種

中型種

かたロ一ス・脂身つき
    〃   なし
ロース・脂身つき
   〃  なし
サーロイン・賭身つき
  ”   なし
ばら・脂身つき
  〃  なし
もも・脂身つき
  〃  なし
ヒレ
手羽
むね・皮つき
  〃 なし
もも・皮つき
  〃 なし
ささみ
27.5 16.9 16.2
20.4 9.1 8.3
31.0 16.6 19.4
23.3 6.1 8.4
26.4 19.6 37.7
16.3 8.3 29.7
7.6 6.1 7.8
4.9 2.6 4.3
15.7 6.7 7.0

22.6

15.8

16.6

11.2

25.7

19.3

13.2

9.5
   
   

38.3

40.2

30.8

33.0

7.4 7.5
3.5 3.6
4.5 3.4

 

 

 

 

 

 

 

 
     
     

 

 

18.6

15.8

16.5

12.3

10.1 2.4
10.6

14.6

2.5 7.4
0.7 0.5

出典:総合調理科学事典(日本調理科学会編)、光生館

表5 脂肪の脂肪酸組成と脂肪の融点(清水ら)

脂 肪 酸






(%)
 ラウリン酸
 ミリスチン酸
 パルミチン酸
 ステアリン酸
0〜0.2
2〜2.5
27〜29
24〜29
-
2〜4
25〜27
25〜30
-
1
25〜30
12〜16

-
0〜1
24〜27
4〜7
 オレイン酸
 リノール酵
 リノレン酸
 アラキドン酸
43〜44
2〜3
0.5
0.1
36〜43
3〜4
-
-
41〜51
6〜8
1
2

37〜43
18〜23
-
-

脂肪の融点(℃)
40〜50

44〜55

36〜46

30〜32

出典:島田淳子、畑江敬子編著:現代栄養科学シリーズ調理学、朝倉書店


 融点の高低は腸管からの吸収率にも関与し、融点の高いものは吸収率が低く、融点の低いものは吸収性には優れています。しかし、酸化されやすいので、保存・安定性の面からは不利と言えます。
 食肉の脂肪酸組成は表6に示しました。食肉中にはリノール酸、オレイン酸、極少量のαリノレン酸を含有しています。食事として、調理され摂取された食肉の脂肪は酵素により脂肪酸に分解され、血中をめぐり、各組織に取り込まれ酸化されて平均9kcal/gの高いエネルギーを発生します。食肉中の脂質含有量は肉の種類・部位により異なるので、特に肉好きの場合は、摂取量に注意を払うことです。多すぎると摂取エネルギー過剰による肥満や体内の脂肪酸代謝に異常をもたらし、種々の生活習慣病を誘発させる一因ともなりかねません。一方、不飽和脂肪酸のうち、人間が体内で合成できないリノール酸、αリノレン酸、アラキドン酸は必須脂肪酸と呼ばれています。これらはリン脂質に取り込まれ、生体膜の構成成分として働くと同時に、微量で多様な生理作用(例えば循環器系や免疫系での重要な作用)を演ずるエイコサノイド(炭素数20の脂肪酸から生成される代謝産物の総称)の前駆体になることが知られています。このほか、脂肪酸は血清コレステロール濃度の調整やがん・免疫機能、神経機能との関連も示唆されています。