食肉の栄養知識/食肉に含まれる栄養素の特性とその働き



■はじめに
 ├古代人は何を食べていた

■仏教の肉食禁止
■わが国の近世から現代の
 肉食と健康

■国際的な日本の位置
■栄養素摂取の日米比較
■ライフステージ別栄養
■長寿地域の食パターン
■食肉に含まれる栄養素の
 特性とその働き
 ├食肉の種類と栄養成分

■調理法による栄養価の変化
 ├肉類を調理する理由

 ├加熱による食肉の変化
 ├食肉の調理による変化
 ├和牛と輸入牛肉の違い
■食肉とたんぱく質
 ├なぜたんぱく質を食べ
  なければならないか

 ├動物性たんぱく質が
  優れているわけ

 ├日本人と動物性たんぱく質
 ├「トピックス」
   食肉のたんぱく質

■食肉とコレステロール
 ├コレステロールとは?
   -体内における役割-

 ├体の中で作られる
  コレステロール
 ├コレステロールの体内移動

 ├コレステロールと
  脂肪酸の関係

 ├コレステロールと健康・疾病


 
 食肉の種類と栄養成分  食肉の成分(1.栄養成分とその特性)


たんぱく質

 食肉(筋肉)中のたんぱく質の特性は表2に示したように、加熱調理における食味や物性の変化(おいしさの発現)にかかわっています。それと同時に、人間が食肉を食べる理由はたんばく質含有食品の代表格であることにもよります。たんぱく質の働きは、筋肉や臓器など人間の体を形成する構成成分として重要であり、体内の代謝を推進する触媒にも、ホルモンの材料にもなります。また、子孫形成や遺伝などという生命現象の要とも言える役割を果たしています。たんぱく質の栄養価は、食品の種類によって差異があります。たんぱく質は約20種類のアミノ酸が、数十から数百分子が結合して出来ています。摂取したたんぱく質が消化されてアミノ酸となって吸収され、体構成成分の更新に利用されます。約20種類のうち、8種類のアミノ酸(イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、バリン)は体内で合成できませんので、食物から必ず摂取しなければなりません。それで、これらを必須(不可欠)アミノ酸と呼びます。

表2 筋肉たんぱく質

所在
種 類 含まれるたんぱく質

備   考





筋原線維
たんばく質
ミオシン
アクチン
(アクトミオシン)
トロポミオシン
筋肉の約50%線維状,水に難溶,薄い塩溶液に可溶,45〜52℃で凝固しはじめる ミオシンの作用(アウトミオシン→筋収縮,ATP一→ADP十∠P,硬直,保水性,粘着性)
筋 形 質
たんぱく質
ミオゲン
ミオアルブミン
ミオグロブン
ヘモグロブン
筋肉の約30% 球状,水溶性(ゾル)凍結により変性しやすい 56〜62℃で凝固しはじめる 筋線維の細胞質にあたりミトコンドリア,筋小胞体、ゴルジ装置、グリコーゲン,脂肪粒を含む呈味成分が存在 スープのあく成分 ソーセージ(かまぼこでは洗い流されるが,ソーセージでは筋原繊維のつなぎになる)




肉 基 質
たんぱく質
コラーゲン
(ペプシンで消化)
エラスチン
(トリプシンで消化)
筋肉の約20% 水に難溶,熟で強く収縮,線維状コラーゲンは腱,皮.筋膜に含まれ長時間加熱により可溶化(セラチン,煮こごり)エラスチンは靭帯.血管壁に含まれ加熱しても不溶 食肉のかたさを左右する
出典:橋本慶子、梶田武俊、長谷川千鶴:奈良女子大学家政学シリーズ調理学、朝倉書店

 まず、筋原線維たんぱく質と筋形質たんぱく質に含まれるたんぱく質のアミノ酸組成は、必須アミノ酸が豊富に含まれ、アミノ酸組成から見て質の良いたんぱく質といえます。一方、肉基質たんぱく質のコラーゲンは、主に皮、腱、筋や膜の結合組織、軟骨のたんぱく質で、グリシンやプロリンが多く、シスチン、システィン、トリプトファンは含まれていません。また、エラスチンは、腱、血管壁のたんぱく質で、アミノ酸構成はコラーゲンに類似して、たんぱく質の質は劣ります。しかしながら、食肉に含まれるたんぱく質の質が良いことが表3のアミノ酸組成から分かります。また、食肉にはリジンが特に多く、このアミノ酸は穀類には少ないので、食肉を程良く食べれば欠乏しやすいアミノ酸を効率良く摂取することが出来、優れたたんぱく質源食品となります。