食肉の基礎知識/



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 家畜の生産から食肉が出来るまで  


豚の一生

●豚のライフサイクル
私たちの食用としている豚肉の約60%は国産のものですが、残りの約40%は主にロースハムやベーコンなどの加工原料としてデンマーク、北米などから、輸入されています。
日本で飼われている豚の品種には、ランドレース種(略してL)、大ヨークシャー種(W)、ハンプシャー種(H)、デュロック種(D)、バークシャー種(B)などがあります。牛の場合と異なり純粋種のシェアは小さく、繁殖用の豚の約7割、肉豚の約8割以上を雑種が占めています。雑種はL・W・H・Dの4種によるものが大部分で、その交雑方式には色々な方法がありますが、よく用いられているものに三元交雑があります。
三元交雑とは、雑種強勢効果(品種または系統間の交配によって、その能力が両親の平均能力を上回る現象)を活用した生産の方式です。例えば、繁殖用に優れた(L×W)の雑種の雌に、産肉性や肉質に優れたHやDの雄を交配し、産肉性や肉質に優れた肉豚をより多く生産する方法があります(図2)。

雌豚は、生後8ヶ月齢時(体重120kg)に初めて交配されます。この場合、牛と異なり大部分が自然交配で行われます。これは、豚の場合生産者が雄豚を自分で持っていてもそれほど経費がかからず、また、自然交配の方が受胎率が高いことによるものです。
交配され、妊娠した雌豚は、約114日の妊娠期間を経て、12ヶ月齢時に初めて子豚を産みます(豚は牛と異なって多胎動物ですから、普通1回で10頭位分娩します)。
生まれた子豚は、約1ヶ月間、母豚に育てられますが、生後10日目位から徐々に飼料も与えられ、牛の場合と同じように雄は去勢されます。
こうして大きくなった子豚は、1ヶ月齢時に離乳し、肥育に仕向けられます。肥育に仕向けられた子豚(生後1ヶ月齢時、体重7kgのもの)は、6〜7ヶ月齢時で105〜110kg程度に仕上げられます。この間の餌は、配合飼料が主体となりますが、おおまかに言って、餌を3〜3.5kg与えることにより、体重が1kg増える計算になります。繁殖の役目を終えた豚(平均3歳)は、牛のように飼い直しをしても肉質の向上など経済的な効果がないので、そのままと畜され、主にソーセージ原料などに利用されます(図3)。