食肉の基礎知識/



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 家畜の生産から食肉が出来るまで  


牛・豚及び鶏の比較

 私たちに食肉を提供してくれる牛・豚及び鶏は、それぞれ成長及び繁殖能力などの生理的特性が異なっています。
 牛は豚や鶏に比べて成長も遅く、性的に成熟するのも遅い動物です。繁殖に供用出来る月齢が、鶏は6ヶ月齢、豚8ヶ月齢に対して、牛は15〜16ヶ月齢と約2倍もかかります。また、妊娠期間も、豚の114日に対して285日と2.5倍も長くなっています。
 鶏の場合、必ずしも正確な比較にはなりませんが、卵から雛になるまでのふ卵期間はわずか21日間です。
牛は、生まれたばかりの雌子牛が最初の子牛を産むには2年以上かかりますが、豚は1年で母豚になります。しかも、一度に10頭もの子豚を産むことが出来ます。鶏は6ヶ月齢前後から卵を産み始め、生後1年間に150個位の卵を産むことが出来ます。
 また、肉牛の場合、成雌牛が1年間に産む子牛の頭数は0.9頭(平均13ヶ月に1頭)ですが、成雌豚の場合は、1回に10頭の子豚を年2回計20頭産みます。
肉用鶏では雛をとるための種鶏の場合、種卵採取期間の280日間に約225個の種卵を産みます。
また、与えられた飼料がどれだけ動物の体重を増やしたかという飼料効果で比較してみますと、肉専用種牛は体重1kg増やすのに約10〜11kgの飼料を必要とするのに、豚はその約3分の1の3〜4kg、ブロイラーは約5分の1の2.2〜2.3kgで体重を1kg増やすことが出来ます。このほかに、肉牛生産には豚や鶏の生産より出荷するまでの期間が長いため金利が多くかかるし、価格変動によるリスクも大きくなります。

 このように、牛肉は豚や鶏肉の生産に比べて相当多くのコストがかかります。牛は生産コストを引き下げるという点で、豚や鶏に比べて品種改良、飼育技術の面で後れをとっています。その結果、牛肉の価格に比べて豚肉、鶏肉の価格が総体的に安くなり、消費量も多くなっています。世界的にも牛肉の生産をコストを下げ、豚肉・鶏肉との競争を有利にするため、色々な試みがなされています。成長を早めるため、より成長の早い品種との交雑種を作ったり、去勢すると肉質は向上しますが、成長が遅くなるため去勢をせず雄牛のまま肥育したり、また、より成長の早くなる飼料の研究、肥育技術の改良への努力もなされています。
 豚や鶏は、人間の食料と同じものを食べて成長しますが、牛は草食動物ですから、人間が利用できない草などの植物繊維から肉や牛乳を作る能力があります。日本を含めて世界中には、まだ膨大な量の未利用の野草・稲ワラ・麦ワラ・とうもろこしの茎葉などがありますから、これらを活用して安い牛肉生産への努力も試験研究機関・農家レベルなどで日々続けられています(表3)

表3牛・豚及び鶏の繁殖並びに成長の比較
項目     畜種
牛(肉専用種)
鶏(肉用鶏)
初回交配月齢
15〜16ヶ月
8ヶ月
6ヶ月
妊娠(ふ卵)期間
285日
114日
(21日)
初産月齢
25〜26ヶ月
12ヶ月
※7ヶ月
1回の分娩頭(卵)数
1頭
10頭
1個
年間の産子(卵)数
0.9頭
20頭
225頭
体重1kg増体に要する穀物飼料
10〜11kg
3〜3.5kg
2.2kg〜2.3kg
出荷時月齢
30ヶ月
6〜7ヶ月
56日
出荷時体重
690kg
105〜110kg
2.7kg
注:※種卵採取開始時期を意味する。