食肉の基礎知識/



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 食肉生産にかかわる先端技術  


体外受精卵の生産と利用

 近年、受精卵移植や核移植、あるいは雌雄産み分けの技術など多くの先端技術が家畜の改良・増殖の分野で応用され、また、実用化されています。
それらの中で、食肉の生産に直接かかわっていて、しかも生産現場にしっかりと根を下ろしいる技術に牛の体外受精技術があります。


 生命が誕生するきっかけとなる受精現象は、雌の卵管内で精子と卵子が遭遇することから始まります。精子が侵入を終えた卵子は受精卵となり、細胞分裂を繰り返しながら、卵管内をゆっくりと子宮に向かって移動します。牛では、受精後およそ1週間で受精卵は卵管を通り抜け子宮に姿を現します。この時期には、受精卵は桑実期を経て胚盤胞期にまで発生しています。この受精から胚盤胞期までの発生過程を、母体内ではなく実験室で実現させたのが体外受精卵です。この胚盤胞期まで発生した体外受精卵を母体の子宮内に器具を用いて注入し(移植すると言います)、首尾良く着床すれば、やがて子牛が生まれることになります。

 現在、社団法人家畜改良事業団家畜バイテクセンター(東京品川)と同神戸分室では、東京食肉市場中央卸売市場や神戸市中央卸売市場西部市場でと畜される黒毛和種雌牛の卵巣を利用し、黒毛和種の体外受精卵を生産しています。この体外受精卵を乳牛に移植すれば、乳牛から黒毛和種が生まれることになります。
 この体外受精卵の利用によって、搾乳用としては不向きな低能力の乳牛や交雑種雌牛などから純粋の黒毛和種が生産できるため、黒毛和種の効率的増産が可能となります。体外受精卵は大量生産が可能な技術であるため、受精卵価格の低減が可能となります。従って、黒毛和種の生産コストの低減が図れるなどのメリットがあります。
 しかし、何と言っても一番のメリットは、A4とかA5の枝肉を生産した産肉能力の高いことが確認された雌牛の卵巣から、直接受精卵を作ることが可能であるという点でしょう。親牛の肉質を実際に確認してから子牛を作るのと同じですから、これほど確かなことはありません。体外受精卵の利用によって、高級肉を生産した親牛の遺伝素質を確実に、効果的に子牛に伝えることが出来ることになります。
 体外授精技術が、おいしい牛肉を安く大量に生産する技術として関心を集めているゆえんです。